別に僕はシイタケが嫌いなわけじゃないです。
むしろめっちゃ好き。
石づきだけ切って、まるっとフライパンで空焼きにして、シイタケさんが汗をかいてきたなぁーってくらいのとき、醤油を数滴、ジュッ、とフライパンの上にたらして食べる。あつあつのシイタケエキスがビュワッと口腔内に広がり、鼻腔まで薫ります。最高のつまみ。
でもシイタケが嫌いな人の気持ちはわかります。
彼らはシイタケに敏感です。
「あ、これシイタケ入ってるでしょ!?」
恐らくシイタケには到達していない部分を食べても分かります。エスパーかと思います。
しかしそれは念力ではなく、シイタケエキスの強さによるものです。
彼らはどんなに細かく粉砕したシイタケでも発見し、除去します。
たとえそれでメシが冷めても、です。
これがバイトだったら時給は1100円くらいだな、と思えるほどの細かい作業です。
彼らはメシをあったかくおいしく食べることよりも、シイタケを取り除くことに心血を注ぎます。
嫌いゆえに情熱的なのです。
妻は虫が嫌いです。
故に発見が驚くほど早いです。
電車でも恐らくイチバン最初に車内の不審虫に気がつきます。エスパーかと思います。
急にキョロキョロしはじめると大体、虫を目で追っています。
視力はあまりよくないのに1ミリほどの虫はどこまでも見えます。
人体の不思議です。
足元の虫もよく見えてます。
「あ、踏むよ!!!」
怒鳴られます。
僕が鈍感なだけではないと思います。
妻の虫警戒網がスゴイのです。
妻は虫が嫌いが故に、虫に対するアンテナを張り巡らしています。
嫌いなのに常に虫の事を考えてしまっているのです。
嫌いなものって敏感になりますよね。
僕はいま会社で仕事のフリしてこの日記を書いているんですけど、嫌いな人の声ってやたらデカく聞こえます。
いちいち立ち上がるのも気になります。
すれ違う際の衣類の洗濯の匂いも、臭くないのに気になります。
けれどもアイツは話しかけてきます。
きっと僕が嫌いなのを知らないのでしょう。
僕もいい歳こいたおっさんです。
流石に「おまえがキライだ」なんて言いません。
職場で嫌な空気になるからです。
でも嫌ってる感は出しているつもりです。醸し出してます、話しかけんなオーラを。
周りの同僚はそれを感じているみたいですがアイツは感じないようです。鈍感です。
アイツは僕を嫌っていないのでしょう。
故に鈍感。少しは気がついて欲しいと思っています。
その鈍感さ加減も嫌いに拍車をかけます。
鈍感さが妙にピュアに感じてしまいます。
そして嫌悪感を抱く自分に嫌悪感です。
アイツが僕を嫌っていないように、きっと、虫やシイタケはアナタのことを嫌っていないでしょう。
いつか虫やシイタケを愛せる日が来るといいですね。
僕はたぶんアイツは無理ですけど。
ちなみに本題とはまったく関係ない話ですけど、ウチの妻は降り始めた最初の一滴の雨がイチバン最初に当たる奇跡の女です。ちなみに地震の最初の一振りも彼女にふりかかります。
奇跡の女です。