まだロックが好き

まだロックが好き

おめおめと生きている日記

BECKの「Colors」を聴いた。すごかった。

 ベックというアメリカ人が新しいアルバムを出した。いままでの私が持っていた「BECK」という人の印象とはすこし齟齬があったけれども、超すごく好いアルバムだった。

とにかく音が好い

 もしかしたらこのアルバムはEDMとして括れるのかもしれない。と思ったのは一曲目が「Colors」というデジタルハイファイな曲だったからだ。脳震盪をおぼえるような衝撃があった。めっちゃポップですてきだった

 

 おそらくこの解像度は打ち込み音源だろう。音というよりは振動と形容したほうが釈然とする立体的な圧が水際立っている。EDMを好事するかたからすれば、とりわけ大仰に言うものではないかもしれない。

 

 しかしベックの切り拓いた音楽的境涯からすれば、ベックはオルタナティブというジャンルだ。これをオルタナとして聴くと、まぁとにかく音が好い。音の解像度がとても鮮明だった。

 

 そういえば、こういった感想レビューものを記載するばあい、音楽の音圧について触れる人がいないのがなんとなく奇矯にかんじている。こぞって「このイヤホンは低音はあまり出てないけれど…高音はくっきりしていて…」とか言うくせに、音楽のレビューになると音質のことはさっぱり言わなくなる。ふしぎだ。

 

 音楽を作成する作業にミックスやマスタリングとよばれるものがある。これにどれだけ時間と労力をかけているか、というのがあまり顕在化していない気がする。ぶっちゃけレコーディングよりもこのミックスマスタリングのほうが時間がかかる。この作業でなにをしているか、というと音圧を上げたり、音のバランスを熟考したりする。

 

 音楽がこころにまで届くときがある。しかし曲が好いからといってミックスやマスタリングが下劣なものであれば、それは耳で止まり心まで届くことはなくなる。逆にミックスやマスタリングが好いだけで心に届いてしまう音楽もある。このカラーズというアルバムは曲も好いうえにこのミックスマスタリングが好く出来ていてほんとすごい。ふだんロックやポップスばかり聴いている身代からしたら驚愕するものだった。

 

ギタリストBECK

 私はこのひとはシンガーソングライター的な位置におわすとおもってる。そして意外とギターがかっこいい。奔放で伸びやかなのに、どこか撥弦楽器の本質や、古典的なブルースやカントリーの礎をとらえているような気がする。

 

 私がバンド時代、「スライドギターをメインに拵えたリフを作ろう」と思ったとき、すでにルーザーというベックの超有名曲があって世界の広さをしった。かれのギターはこのアルバムにも漏れず、耳を聾するような音圧の中から珠玉のフレーズが聴こえてくる。

 

 二曲目の「Seventh Heaven」の左右にパンが振られた揺曳するクリーントーンのギターの瑞々しさといったら。ミュートを効果的にさりげなく織り交ぜるところとか、音を紡ぐアイデアとしてとても学問できることがある。

 

 このギターサウンドもまたぱちりぱちりと判然と聴こえて聴き心地がとても好い。そして三曲目の「I'm So Free」のオーバードライブしたリフレインにのっかるラップ調からの開放的なサビ。なのにどこかひっかかるようなコード進行。四曲目の「Dear Life」は私の知っているベック感がつよくてとても好きだった。ギターのいなたさ、というかコミカルで諧謔味のあるフレーズとか、ほんと奇才だとおもう。

 

色彩豊かなポップ

  おそらくベック自身はこのアルバムを「万人に受けるもの」を意識してつくったのだろう。かつてカートコベインがニルバーナというバンドでネバーマインドを作ったように、大衆を意識した作品になっているとおもう。

 

 しかしこの予告ホームランは途轍もなく粋だ。そしてじっさいにやれちゃうところが、ベックはやっぱ端倪すべからざる人だし、凡百の私からすると畏敬の念にリンクする。

 

 「No Distraction」とかめっちゃかっこいい。音の数がふっと減ったときに、つよいメロディと上昇していくコードがあるだけで、こんなにも曲というのはかっこよくなるのだなぁ、とおもう。もちろんそれに至るまでの布石たる螺鈿をちりばめたようなAメロがあるのだが。

 

「耳当たりは好いのにすごい混沌としている感」はなに?

 七曲目の「Wow」なんていうのは名伏しがたいのだが、間延びしたヒップホップだとおもう。音色はあたたかいもので平和的なふんいきなのに、そのテンポはダウナーで不可思議な空気をつくりだしているとおもう。カオスだ。

 

 八曲目の「Up All Nignt」も録音したギターをいじくりまわした音がしているし、スライサーで切ってコピペして並べたりして、ってゆうようなデジタルとアナログの混淆をなしてきた人なんだよなぁって思う。っちゅうかこの曲の編成なに? なんでBメロちがうん? っておもうようなポップな混沌さがある。

 

 「Square One」なんていうのもフェイザーがかかった喉越しの好いギターが飛んできて気持ちよい。なによりメロディに意思のある眼差しのような鋭い強さがあるなとおもう。

 

まとめ

 駆け足で書いてしまったが、聴いてみてとてもびっくりしたので感想を記載した。初めてこのアルバムでベックに触れて、前作「モーニングフェイズ」を聴いた人はどうおもうだろうか。モーニングフェイズとは方向性がちがうように感じるが、こうしてベックの作り上げる音楽にはまるひとが居れば好いなぁと思う。

COLORS [CD]

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