まだロックが好き

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おめおめと生きている日記

Album Leafの「In a safe place」を聴きました。と、と、と、と、透明感。

 冬の到来にウィルコというバンドの「ヤンキー」というアルバムをよく聴く。「ヤンキー」という略しかたはWilcoというバンドに対して誤解をあたえるので「Yankee Hotel Foxtrot」としっかり記載しましょう。

Yankee Hotel Foxtrot

Yankee Hotel Foxtrot

 

 

 季節が音楽をはこんでくる。とでも言いますか、冬のふんいきを迎合するようなアルバムだなぁと思っている。低くかまえた太陽の放つ斜光と、白く毛羽立ったりんかくと、すきとおった空気の生活に舞い上がる陽光と、みたいな。冬なのに陽光はあたたかくて、でも寂寞としたなか、瞼をとじれば陽射しのぬくもりを感じるのに、瞼をあければそれはするどく角膜を突き刺し、痛みをおぼえてしまうまぶしさになる、みたいな異物感。なんとなく聴いていてもすっごくつかれる、ってのは冬にきびしさに似ている、ような。

 

 そんなことをツイッターでつぶやいたら、音楽のうまが合う(とおれが勝手におもっている)林 将蔵様(id:point0625)に「アルバムリーフってバンドも好いよ」ということを教えてもらったので聴いた。すっごい透明感のあるおんがくだった。

 

 透明感。透明って、みえない、という意義のものなのだとおもっている。だが、巷間に横溢する俗物の「透明」は見えるものばかりでぜんぜん透明をかんじない。なんだよ透明クリアファイル。全然みえる。世の中うそばっかりだぜ。でもみえない透明をどうやってかんじるべきなのか。俺は音楽でそれができるとおもう。

 

 アルバムリーフの「In a safe place」というアルバムにはたしかに透明感があった。かんじた。

 

 おもにインストのバンドだった。一曲目が「Window」という曲だったのだが、おれはこれが「クリスタル」みたいな名前でも好いんじゃねぇか、とおもった。すきとおった水晶の鍾乳洞にいるような錯覚を感じるのである。

 

 二曲目の「Thule」という曲もシンセサイザーなどをつかっている主旋律が涼風のようなメロディだなぁなんておもった。すぅっと入ってくる光のカーテンみたいな音と躍動するドラムスに生活のなかのちいさな僥倖みたいなものが感ぜられるなぁとおもった。

 

 インストバンドだと思ったが三曲目の「On Your Way」ではボーカルが発生した。ゆるりとした雰囲気で、やわらかな風のようなギターの春風駘蕩のアルペジオに、光の洞穴で弾ける一粒の結晶のような愛らしいエレピ、もしくはシンセサイザーがぷっつりとした印象を残すなぁなんておもった。

 

 このアルバムではそういうふうな音を多用していて、この音の透明感はなんなんでしょうね。別のバンドの楽曲でもこういった音は非常によくしようされていて、以前わたしはこれを「つめたい星の光のような」みたいに書いた気がするのだが、上記のような感想もいだく。そういった表情を音楽のなかでかえていく音だとおもう。

 

 ブレイクビーツみたいなものもしようしている。するどく切れ込みをいれた音を縫合したような感触の電子的な音なのだけれども、ノリノリだぜ! みたいな使い方ではなかった。硝子がやわらかく砕けるようなうつくしさの音と相まって、つめたいような音なのに胎の底でぽっと焚き火がともるようなぬくもりを感じる。そこに荘厳なストリングス音もはいってきてしまってバッチグーだぜ! とおもう。五曲目の「The Outer Banks」は静謐な激情のようなものをかもし出していて、好きだナァとおもった。

 

 こういった音だけのインストバンドを聴くと、ことばとは陳腐なものだなぁとおもう。ことばがないもののほうが詩情をかんじやすいナァなんておもうからだ。それは風光絶佳なグランドキャニオンみたいな景色だったり、幽邃な古刹のたたずまいだったり、ふと暮れ色にそまった商店街に吹く一陣の風だったり。そういうことばではめいふくしがたいもののほうが、もののあはれ、ではないけれども、なんというかことばでは伝えきれない「詩」的で、不可思議なパワーを秘めているような気がする。

 

 それでもことばが音楽になるのは単調なリフレインなのかもしれない。とおもったのは六曲目の「Over The Pond」という曲は歌入りなのだけれども単調な繰り返しで、ことばを音楽にしているなぁなんておもった。

 

 四曲目「Twenty Two Fourteen」や七曲目「Anaother Day」には森寂とした聖性をまとったようなふんいきがあるようにおもった。鬱蒼とした木々をすりぬけてくる斜光が幻想的で、かくじつに質量のある光の帯の荘厳味というか。そこにデジタルなブレイクビーツみたいなものがはいってきて妙な現実感と、切迫するようなドラマチックを演出しているのだなぁなんておもう。九曲目の「Eastern Glow」なんてのもそうかな。

 

 このアルバムのハイライトはなんといっても八曲目の「Streamside」じゃないのかしら。悠然とした、なんの抵抗も感ぜられないように泳ぐアデリーペンギンのなめらかさみたいな。途次に聴こえるフィンガリングノイズなんかも味があって好き。きらいなひともおるだろうけどおれはフィンガリングノイズけっこうすき。ギターの呼吸が聴こえるようで。

 

 ばかみたいにたくさん書いてしまったが、アルバムリーフの「In a safe place」には実態感のある透明を感じることができるなぁなんておもいました。すみきった冬の空気に吻合するような好い音楽だナァなんておもいます。

In a Safe Place

In a Safe Place