まだロックが好き

まだロックが好き

おめおめと生きている日記

Arctic Monkeysが「Tranquility Base Hotel & Casino」を出したすごさ

 たしかレディオヘッドの「kid A」が二〇〇〇年に出て、ギターロックを殺害し、なんだか超越的な存在になったかとおもったら、二〇〇一年にストロークスが「Is This It」を出して「いや、死んでねぇし」つって、世界中でガレージロックリバイバルみたいな気運が高まり、そのなかで、アークティックモンキーズという英国のバンドが、十七歳のアレックス・ターナーに率いられ、「I Bet You Look Good on the Dancefloor」で世の中に出たのが二〇〇五年。アレックスターナーの鮮烈なデビュー。てめぇ、おれとおなじ五黄土星だろ。

 

 学年はいっこ上だが、同年代のバンドとして、おれは高校のころ、その名前は知っていたのだけれど、「どうせ親が音楽通で鳴り物入りのおぼっちゃんの道楽だよ、すぐ消えるわ。ニセモノの音楽だよ」つって聴きもせずにいたのだけれど、ふと劫を経て聴いたら、これがすさまじくかっこよく、こいつはモノホンだ(とくにラストシャドウパペッツを聴いて!)、と思い至り、おれの「倒すべき天才リスト」のけっこう上のほうに記載した。もちろん永遠に倒せない予定です。

 

 そんなアクモンが新譜をだした。ト、トランク…イリティー…? ベースホテルアンドカッジーノ。まぁ判然明瞭に申し上げれば、なんだこれ! というものであった。おれの音楽を聴く耳、感性なんてそんなもん。

 

 ただ、「なんだかすごいことしてるな」とおもったのは、上記したのだけれど、アクモンもギターロックを蘇らせた一端であったはずなのに、その築いた土台を破壊せしめるような音楽をいま現在、おこなっている、ということである。

 

 これはアメリカのジャックホワイトという人も、近年のアルバムでやったことだとおもう。彼もギターリストとして優秀で、過去にギターロックを蘇らせてきたひとなのだけれど、「ボーディングハウスリーチ」というアルバムであまりギターを使わずにアルバムを作ってしまった。

 

 アクモンの新譜もどうように、なんというかあまりギターギターせずにいる。ロックはエレキギターの歴史でもあるので、ロックがギターを捨てる、なんて糟糠の妻を裏切るような行為だとおもう。そんな仁義に反するようなこと、ふつうの人の感覚ではできねぇよ。

 

 でも、時代の天才たちはやってしまう。既存のロックミュージックを破壊する。たとえそれが、自分たちが普請したものであっても。

 

 しかし、ロックとは、なんて大袈裟なことを言うつもりはないが、ロックとは、よく言えば「寛仁な音楽」、悪く言えば「適当な音楽」だとおもう。ジャズでもない。クラシックでもない。ブルーズでもない。カントリーでもない。フォークロアでもない。そんな中途半端な「ジャンルわけ不可能」な音楽が、おれは真のロックだとおもう。

 

 現に、この「トランクイリティ~」は、なんていう音楽? みたいな音楽だった。まだ二回しか聴いてないけれど。ちゃんと聴いたらレビュー書くね。既存のロックミュージックを聴き、「ロックとはこうギターが鳴っていて初期衝動に満ちたかっこいい音楽」なんて頑迷固陋な思想にとらわれた、馬齢を重ねたおっさんにはジャンルわけ不可能なおんがくだった。

 

 二〇一八年を生きるおれたちは、もしかしたらロック音楽の転換点にいるのかもしれない。それを、双肩を揺さぶり「もうこれがあたらしいロックだよ」と気付薬を嗅がせているのがアクモンたちなのではないか、なんておもった次第である。

トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ

トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ