まだロックが好き

まだロックが好き

おめおめと生きている日記

クイーン好きなら The Struts なんてぜったい好きでしょ

 フーファイターズのデイブグロールが、というとちょっと違和感があるのは、やっぱデイブグロールはニルヴァーナのドラマーであって、そもそも彼を稀代のドラマーだとおもっているし、ギター弾いて歌うたってても「おまえはその才能を活かしきれてねぇ」って仙道のきぶんになるし、なんかすげぇいい人になっちゃってるし、なによりフーファイターズがおれはあんまし……ってゆうか、あのバンド、ギター三人も要ります? みたいなかんじなんすよね。

 

 で、そのデイブグロールが「ストラッツが好きだ」なんて言っていたので、聴いてみた。素晴らしかった。こんなのみんな好きでしょ、とおもった。

 

デイヴ・グロールが明かした、最高のオープニング・アクトとは?「観客をあんな風に変えるのは、簡単なことじゃない」 (2018/06/27) 洋楽ニュース|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)

 

 英国のバンドらしい。ってゆうかその風貌はグラムロッカー。時代おくれもはなはだしい、ってものであるが、そのじつサウンドはめっちゃ今様であった。

 

 まぁとにかくボーカルがすごい。ルークスピラーというひとなのだけれども、フロントマンとしての説得力がすさまじい。おれはボーカル、っちゅうかロックバンドのフロントマンに肝要な精髄というのは、説得力だとおもっている。それが顔面でも、作曲能力でも、なんとなくのカリスマ性であってもなんでもいいのだが、とにかく「こいつが歌っている必要性」というのがフロントマンがもつべきものだとおもっている。

 

 とにかく歌が巧い。なんじゃそのタングトリル。その声もどことなくクイーンのフレディマーキュリーに似ている。タイム感にはマイケルジャクソンふうのそれもある。そんで粘る。声が粘るボーカルというのはとてもロックだ。粘って、歪んで、遠くに届く。これが伝説のボーカルにそろっているべき三種の神具だとおもう。

 

 曲もいい。ってゆうか曲がいい。「Everybody Wants」というアルバムを聴いたのだけれど、一曲目「Roll Up」や二曲目の「Could Have Been Me」なんてのはサウンドは今般のエモ風味。「Could Have Been Me」の曲の立ち上がりなんてかんぜんにキラーズ。でものってるメロはさいきんのやっつけバンド風ではなく、しっかりと息の長い、印象の強いメロディである。

 

The Struts - Could Have Been Me - YouTube

 

 メロが強いとどこか古臭いかんじがする。むろん現代音楽にメロディの革新性をもとめるほうが間違っているのかもしれない。けれども、いつだってひとのこころを撃つのはリズムでもハーモニーでもなく、メロディだ。そんな古臭いメロディを、過ぎ去ったバンドサウンドにあたらしい風を吹き込んで鳴らしたのが三曲目「Kiss This」やつづく四曲目の「Put Your Money On Me」のような曲であろう。

 

The Struts - Put Your Money On Me - YouTube

 

 ロックバンドというのは矛盾をかかえた存在であるとおもう。それは商業的エンタメ性と、非商業的孤高性というアンビバレントなものだ。つまり「売れなきゃしょうがねぇけど、売れたら売れたでそんなオンリーロンリーな自分との蹉跌が生じる」みたいなもので、そういうのに苦吟して好い曲をだすバンドもいれば、自決してしまうものもいる。

 

 ストラッツはどうか。というと、めちゃめちゃ商業的だ。むしろエンタメ的だといっていい。つうかこんなん嫌いなひとおらんでしょう、といったふう。曲はキャッチーで、カリスマ的ボーカルがいる。ちなみにルークスピラーめっちゃ顔でかい。でかいしゴリラ系の顔。でも歌うまい。ゴリラのくせに中性的なファッションしてる。ほんのり眼に毒。でもそこにモノホンのガイキチ感があって、こいつはマジなやつじゃん、っておもう。あとやっぱ歌めっちゃうまい。なんだ。好きだ。

 

 なんら恥らうことなく、過去のロックを踏襲し、ふるくさいメロディを今様のサウンドにのせて歌う。へんにかっこつけていない。厭な衒いがない。「こういう音楽を聴いてきたからこういう音楽をやります。あのひとが好きだからあのひとみたいにやります」というきれいな鑽仰がある。まったくもって好感がもてる若者である。

 

 ロックの復興というのはこういうことなんだとおもう。かように含羞なくポップなロックンロールを演じられると、五十年代にビルヘイリーが「ロックアラウンドザクロック」をで若者の心を躍らせてしまったときのような感がある。ロックが複雑化するなかでやはりシンプルにキャッチーなものは、なぜだか新しい色彩を帯びる。いやでも一曲目の「Roll Up」でマイナーからメジャーへの同主調への転調とか音楽的素養をありありとみせつけられるけど。

 

 あとこのバンドはボーカルに眼が注がれがちであるが、ギターめっちゃうまいとおもう。サウンドの作り方とか、運指がすごく丁寧。公式ではないからリンクを貼れないけれど、ライブの様子がユーチューブにあって、めっちゃレスポールジュニアを使いこなしていた。P90のおいしい音がしてた。けっこうパンクよりの弾きかたなのだけれど、レンジの広い、粉砕されたステンドグラスが舞い落ちてくるような煌びやかなサウンドだった。すてきです。

 

 そろそろセカンドアルバムがでそうなふんいきである。すこしきわもの感があるけれど、その本質はとてもキャッチーなバンドで、世界のエンタメを担うバンドだとおもう。ってかルークが歌えばけっこう格好つく。ほんとなに。才能じゃん。なんでもっとはやく教えてくんなかったの。

 

Everybody Wants

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