まだロックが好き

まだロックが好き

おめおめと生きている日記

MetallicaのSt. Angerはメタルじゃなくてオルタナです

 オルタナってジャンル名どうなんですか? どういう意図がかくされてるの? なんだかちょっぴり茫洋ですな。まぁそういうジャンルでそういう音が確立されてるなら、もうなにも言いません。でも納得はしていない。プレーリードッグが犬じゃないことくらい納得していない。

 

 過日。メタリカのセイントアンガーというアルバムを聴いた。たしかおれが高校生のときに発売されて、リアルタイムで聴いたはじめてのメタリカだった。そのときどうおもったかは失念してしまったが、メタリカの出世作である「マスターオブパペッツ」や「ブラックアルバム」よりは聴いた。おそらくこの「セイントアンガー」がメタルじゃなく、オルタナだったからだとおもう。

 

 そもそもおれはメタリカの熱心ファンではない。いちロック好きとして、通るべき路としてメタリカを聴いた。好きでも嫌いでもない。あ、メタリカだな、とおもう程度。鳩胸のひとを見て、「あ、鳩胸だな」とおもうかんじ。夕景の住宅街にひとすじのカレーのにおいがただよってきて、「あ、この家は今日カレーだな」とおもうようなかんじに似ている。無視しないけどどうでもいい、みたいな。

 

 そいでファナティックなメタリカ信奉者に「メタリカならセイントアンガーが好きです」というと罵詈讒謗めいた峻列な批判を食らう。「てめぇはメタリカをわかってねぇ」てきなやつ。いや、おれにとってメタリカは夕景にただようひとすじのカレーのにおいのような存在なのでそんなこと言われてもこっちが困ります。

 

 そう、実はセイントアンガーというアルバムはメタリカのなかでは異色のそんざいなのである。急に「である」調にしてみました。語気が強いですな。でもメタルというのはそういう整然とした硬派で様式美が強い音楽なのである。

 

 まず第一にドラムの音が気に入らない。というファンの声があがる。ウィキで見たのだがどうやらスネアのスナッピーをはずしているようである。スナッピーというのはスネアの裏に橋渡ししているエキスパンダーのような物体で、これがあると太鼓の胴鳴りをおさえ、金属めいた硬い音質をはらめるのである。ちなみに、いつも「ルーディメンツ」とか「ライドとクラッシュが……」とかカッコいいこと言ってるドラマーがだしぬけに「スナッピー」というと、こいつかわいいとこあんじゃん、とおもいます。スナッピーかあいいです。ウェルシュコーギーに付けたい名前。

 

 あとミスタースラッシュメタル、カークハメットのギターソロが皆目見当たらない、というのはメタリカファンには不満であるのだろう。さらにいえば、メタルにいつも通底しているコンプ感がない。音の手触りがなめらかでない。ぜんたいてきに荒荒しいのである。スピード感のあるリフが主体であっても、神算鬼謀のメタルみ、というよりは、ただただギターを好きかってに掻き鳴らしているパンクみ、が強い。

 

 メタルはきれいな音楽だとおもう。ゆえにこの荒荒しいセイントアンガーはメタリカをメタルバンドだとおもっているメタルファンには嫌われるのかもれない。しかし、メタリカをロックバンドとして、時代の文脈でとらえたロックファンにとっては、当時のハードコア、グランジ、オルタナ、ラップメタルを迎合したうえでの進化したメタリカに感じられるのじゃないかな、なんておもったりした。

 

 おれはロードもリロードもそんなに悪くないとおもっている。ってゆうかグランジっぽいし。だから好き。そしてなによりセイントアンガーはその意味上にあるオルタナティブロックアルバムなのですごく好き。むしろ形骸化されたメタルの殻をかむっているようなマスターやブラックのほうがじつは苦手だったりする。これは個人の好みのもんだいだとおもう。

 

 まぁだからセイントアンガーは賛否がわかれるんじゃないかな、などと愚考した。メタルアルバムとして捉えると否がおおくなるけれど、オルタナアルバムとして聴けばとてもよいアルバムだとおもう。でも長すぎてぜんぶ集中して聴いてらんないけど。一曲ごと長尺すぎる。むかつく。怒り。プレーリードッグって名前なのに犬じゃないってことくらい怒ってる。

セイント・アンガー

セイント・アンガー