まだロックが好き

まだロックが好き

おめおめと生きている日記

スマパンの「Shiny and Oh So Bright, Vol.1/LP:No Past. No Future. No Sun.」ってタイトルくそ長い

「好きなパンなに?」という問いに「スマパンかな」という、ちょっと寒いアンサーをしたくなるほどにスマパンが好き。その追撃の問いに「スマパンのなにが好きなの?」とくれば「マヨネーズかな」なんて答えたくなりますね。あれめっちゃいい曲だろ。

 

 そんなスマパンが新しいアルバムを出した。ので聴いた。すごくよかった。イハとジミー・チェンバレンが戻ってきたってのもあるけれど、正直に言ってしまえば、この二人の特色みたいなものは少ないアルバムだとおもった。

 

 けれども、この二人がいるだけでビリー・コーガンというひとの天稟は目覚めるのだとおもう。安心感があるのだろう。スマパンというバンドに、ぽっ、と魂が灯ったような気がするアルバムだとおもった。

 

 どう矯めつ眇めつしてみても、スマパンというバンドの核はビリーである。彼の「憂い」というのは曲になるとすさまじく美しい。その暗然たる気性を表現するのにピアノとストリングスというのは最適解なのだとおもう。一曲目の「Knights of Malta」なんてのはまさにそれじゃんとおもう。

 

「Silvery Sometimes (Ghosts)」みたいなのは往年のオルタナグランジスマパンファンに向けてつくったのかもしれない。かっこいい。憤懣遣るかたないってかんじ。おれはあのギラギラ、ってゆうかヌラヌラしてる「Bullet with Butterfly Wings」がスマパン「怒り部門 」で一番好き。

 

The Smashing Pumpkins - Silvery Sometimes (Ghosts) (Official Video) - YouTube

 

The Smashing Pumpkins - Bullet with Butterfly Wings - YouTube

 

 同様に「Solara」や「Marchin' On」もめちゃカッコいい。ってゆうかこういう曲のジミー・チェンバレンのドラムの正確さがヤバい。随所で鳴る金属的なカップ音は尾をひく気持ちよさ。オープンハットのもどり音でさえグルーヴになる。そしてなにより太鼓の連打が打ち込みのごとく、粒も間隔もそろいすぎている。放物線を描かない。ジャズだ。

 

The Smashing Pumpkins - Solara - YouTube

 

 ビリーにはなんだか鬱屈した優しさがある。虐げられてきたコンプレックスのようなものがある。いじめられたことがあるやつが一番優しさを知っている、みたいな。

 

 泣いている子がいれば声を掛けてあげたい。けれども掛けられない。それは勇気がないからじゃない。今は子どもへのそういう配慮が厳しいからでもない。「おれなんかが声を掛けたらこわがってしまう。逆にヤバい」とおもうからである。

 

 そういった陰鬱な思いやりが「Travels」という曲にはある。おれが好きなビリー・コーガンの特徴のひとつである。ポップ。ってゆうかおれはポップなスマパンが好き。アドアに「Perfect」という曲があるけれど、そういうまるみを帯びた優しさってゆうか、マシーナの「Try, Try, Try」みたいなふうをかんじる。名曲「Today」とかさ。野菜に聴かせたらたぶんすごくおいしく育つとおもう。

 

The Smashing Pumpkins - Perfect - YouTube

 

The Smashing Pumpkins - Try, Try, Try - YouTube

 

The Smashing Pumpkins - Today - YouTube

 

 

「Alienation」コンパクトなオーケストレイションが壮麗だとおもう。ユニゾンするのはイーボウを使ったギターなのだけれども、これはおそらくジェフなのだろう。ビリーだけになったスマパンを支えたのはジェフだとおもう。とてもあたたかい音をしている。真ん中で鳴るギターはビリーか。ビリーってビブラートを大きく取る癖がありません?

 

 たいしてイハのギターってすごく透きとおっている。サステインの伸びやかさも原因だろう。だからこそ融通無碍。暴力的な曲では荒れ狂う嵐になり、静謐な曲では冷たい星の輝きのようになる。ふだんは静かで優しげなのに、闘うと急に豹変する気の狂ったサイコパスのひとみたい。

 

「With Sympathy」という曲はこのアルバムの白眉だろう。くッそ好き。光の粒が肌に触れて砕けてしまうようなアルペジオがきれい。研ぎ澄まされた日本刀のような狂気をはらんだギターではないけれど、イハはこういうギターも弾ける。あとやっぱふつうにメロがいいよ。ビリーのメロ。

 

 アルバム全部、とにかくメロディがいい。けっきょく、いいアルバムというか、いい曲って「メロディがいい」ってことに尽きるとおれはおもう。だれが分けたか知らんけど、音楽の三大要素を「リズム、メロディ、ハーモニー」なんて分割している。それに倣えば、メロディってのはなんでこんなに心が揺さぶられるんだろうな。不思議。

 

 スマパンの全盛期は「サイアミーズドリーム」、「メロンコリーそして終わりのない悲しみ」だろう。おれ自身、何度も繰り返して聴くのはこの二つと「アドア」くらいである。有体に言えば「オセアニア」以降のアルバムは聴いていない。

 

メロンコリーそして終りのない悲しみ

メロンコリーそして終りのない悲しみ

  • アーティスト: スマッシング・パンプキンズ
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1995/10/25
  • メディア: CD
  • 購入: 1人 クリック: 22回
  • この商品を含むブログ (78件) を見る
 

 

「これを良く見せるために、あれを貶す」みたいなことをしたくないけれど、オセアニアは微妙なアルバムだった。空隙をギターを弾いて無理やり埋めた、みたいなかんじがする。

 

 ちなみに「アドア」というアルバムはジミーが逮捕され不在だったアルバムだけれど、ジミー不在という空隙をドラムで埋めようとしなかったところに意義があるのだとおもう。その暗澹たるおもいはそのままにしておこう、みたいな。あまり評判が良くないみたいだけれど、おれは超名盤だとおもう。

 

アドア

アドア

  • アーティスト: スマッシング・パンプキンズ,ビリー・コーガン
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1998/05/30
  • メディア: CD
  • 購入: 1人 クリック: 8回
  • この商品を含むブログ (18件) を見る
 

 

 だからスマパンはビリーの精神状態でいいバンドになったり、聴くほどでもないバンドになったりする。今回のアルバムは個人的にすごいいいアルバムだとおもった。「ボリューム1」と謳っているからには続編があるのだろう。続きが楽しみである。

 

シャイニー・アンド・オー・ソー・ブライト VOL.1 / LP:ノー・パスト、ノー・フューチャー、ノー・サン【CD(日本語解説書封入/歌詞対訳付)】

シャイニー・アンド・オー・ソー・ブライト VOL.1 / LP:ノー・パスト、ノー・フューチャー、ノー・サン【CD(日本語解説書封入/歌詞対訳付)】

  • アーティスト: スマッシング・パンプキンズ,ビリー・コーガン,ジェームス・イハ,ジミー・チェンバレン,ジェフ・シュローダー
  • 出版社/メーカー: ワードレコーズ
  • 発売日: 2018/11/16
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る