歌詞において単語の組み合わせというのが定型化している。
例をだそう。
とりあえずナニカが笑っていればいい。
まず笑うという歌詞だけど、なんかこう、ポピュラーミュージックであれば「君が笑う」。これが多い。
「君が笑っている」ことが多い。ほんとハッピー。とくに「静かに」笑っていたりする。
まぁかくなる日本の若者たちの「笑えない状況」。せめてもの救いとして音楽があるのならばそれはそれで正解だろう。
これが意識高い系のロックバンドともなると抽象的になってくる。
まず、空がわらう。しかも「笑う」ではなく「嘲う」とか言っちゃう。
闇とか、世界とか、嘲う。あとモノとかもよく笑う。造花が笑う。(←この曲かっこいいよね!ACIDMAN!)
みんながわらっている。サザエさんのEDテーマみたい。なんてハッピーな世界なんだろう、と思う。
が、これがいわゆる定例化。
とくにこういった人間の感情を伴う行為、笑う、泣く、叫ぶ、エトセトラ。
そういうのをモノとか事象に組み合わせる。そうすると、とりあえず深くなる。という浅い行為。
単語の組み合わせなんてバカでもできるからやりやすいんだと思う。
なんかちょっと含みをもって文学的みたいな。そういう大衆的行為。
で、単語の組み合わせでビビった組み合わせがある。
それが今日書いている表題の人間、五十嵐隆という人間が在籍するシロップ16グラムというバンドの曲だ。
その曲名は「神のカルマ」。
え…。すごない?これすごない?
神にカルマがあったのか?そもそもカルマってなに?なんかこう神仏的なヤツちゃうん?それ神につこうてええの?なんや神のカルマってめっちゃきになるやん。てか見間違いかしら?「神の力 ルマ」かしら。文字だとわかりにくいわね。カタカナ表記「ゴッドパワー ルマ」って意味よ。え、ちがう?神のカルマでええの?まじかよ、くっそセンスいいな、おい。
syrup16gというバンドをおすすめするとき、ひじょうに困る。
というのも、どのアルバムもいいし、故にどのアルバムもオススメできない。
クーデターやコピー、ヘルシー。どのアルバムもシロップらしく、故に全員が好きになれるか、といえばそうではない。かといって解散前ラストアルバム、これはキャッチー過ぎる。好きだけど、シロップっぽくない。むずかしい。だって僕たちシロップ16グラムというバンドが好きなんだもん。
まぁとりあえず、ベストがでてるのでそれを聴けばいいと思う。あんまベストって好きじゃないけどっていうアプローチはしておきたい。念の為。
わき道の話しだけども、ミスチルがベストを出したとき、2枚のアルバムで「肉」と「骨」に分かれていた。
これはかなりネーミングセンスがいいと思う。やはり桜井。天才。(←私もなんだか偉ぶってますね。すみません。)
で、シロップのベストも2枚同時に出た。
そのタイトルが「動脈」と「静脈」。
ヤバイ。このセンス。かっこよすぎやん…。
この2枚のベストアルバムのタイトルから五十嵐になんとなくセンスがあることが明白だと察して欲しい。個人的に「静脈」のが好き。あのバンクバンドがカバーしたリボーンから始まるし聴きやすいぜ。
で、この神のカルマ。
なんの歌か、というとレンタルビデオ屋に行って何を借りていいかわからない、という歌。
たいへん、滑稽な、歌、で。ある。
誤謬が生じると私もシロップファンとして納得がいかないので、この曲の最後の歌詞を書いておこう、と思う。
最新ビデオの棚の前で
2時間以上も立ち尽くして
何も借りれない
何を借りればいい
何本借りればいいんだ
何を借りればいい
これ。このハイセンス。
いや、これわかる人にはわかると思う。
かなりこう、自分と時代との齟齬、あふれる情報の多さについてけねーみたいなんが、うまーく現れている。こういう体験したことあるなら映画なんて観ずにシロップ聴きなさいよ。
この2時間以上ってのもミソ。映画一本観れんじゃねえかよ。
で、これが神のカルマ。いい歌詞でしょ?
「生活」という私の人生を支えてくれた、というと大げさだけど、まぁ青年期の心理状況に響いた曲もオススメ。
心なんて一生、不安さ
なんて絶望的でありながらも、だからこそ、すべてをかなぐり捨てて進める道もあるぞ、という最強の一文。正直アラサーのいまでも響く。
この不安な精神状態。これこそが五十嵐隆のもっともピュアな音楽性。
その彼が常に抱いている不安感はマイクスタンドにつけているピックの数でわかると思う。ざっと目測20枚はつけている。そんないらないでしょ…。
今回は主に歌詞について記事を書いているが、この生活という曲のギターソロはカッコいい。ギターにしかできないソロ。ちいさなチューブアンプを歪ませたようなドライブ感が気持ち良いし、なによりメロディが優秀。
各楽器で、引き出せるメロディってのは違う。ラッパならラッパしか出せないメロディがあるし、あからさまなメロディであれば歌詞をつけて歌にしたほうがよりパワーを引き出せる。
この生活のギターソロはギターでしか出せない、ギターでしか活きないメロディだと感じる。でも複雑でなく鼻歌でうたったりで、具現化できる。
とにかく聴いてくれっていうと、こうして私が文字にしているのが無駄になるが、まぁとにかく聴いてくれ!!
生活はどんな曲、歌詞か、というと目覚ましが鳴る曲。
また小ばかにしたような表現だが、この曲のラストの歌詞を見てみよう。
そこで鳴っている
そこで鳴っているのは
目覚まし時計
歌詞の一部だけ切り取って、作者の心理を読みなさい、って国語の授業じゃあるまいし…。気になる人は聴くか、検索サイトで検索でもしてみてください。全文載せる気概はないのです。
この曲のすごいところ。それは「目覚まし」という単語をファルセットで歌うところ。
初めてゾウを見た人はどれだけびっくりしただろうか。
初めて納豆を食べた(食了した)外国人はどれだけびっくりした?
初めてコーラをのんだ子ども、初めておちんちんがおおきくなっちゃった男の子はどれだけびっくりしただろうか。
そんな衝撃。
私は、初めてファルセットで「めざまし~」と歌う人間をみたのです。
武士はくわねど高楊枝。ロックとはかっこつけてなんぼ。みたいな概念は崩れ去り、かっこ悪い内省的な歌詞をさらけ出すことが逆にカッコいいコトになっている昨今のロック事情。(それも、もう古いか。)
だからといって目覚まし。これをファルセット。どうなの?みんなどう思っているの?
歌詞の定例化。と冒頭で申したが、最近みんな歌うことが一緒なんだよ。
それは意味だけでなく、やっぱ単語もそう。
ロックってのはやったことないことやらなくちゃ。そうでしょ?
だから「めざまし~」これ大正解。素晴らしいの。きっとそういうこと。たぶん。
ということで「生活」は名曲です。
なぜこういった記事を書いたかってニューアルバムがでたから。聴いてないけど。
最後が余談であるが、五十嵐隆。いがらしたかし。って韻を踏んでいて言葉にして気持ちいい。10回言ってみたくなる。
いがらしたかしいがらしたかしいがらしたかしいがらしたかしいがらしたかし…。
あっ…いがらしたかしが笑ってる。
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