極論は避けるべきである。それを見て傷つき、怒る御仁方がおられることが想像できるからである。
しかし、そうして当たり障りなく生きていくのは気がひける。なぜなら俺は男だからだ。言いたいことは言う。それで誰を傷つけようと知ったこっちゃない。体裁ばかり気にするのは現実世界だけでじゅうぶんだ。だから言う。チョコモナカジャンボよりバニラモナカジャンボのほうがうまい。
過日。バニラモナカジャンボを食べた。美味かった。
バニラモナカジャンボとは森永製菓が開発販売した冷凍食品である。硬度の高いモナカ生地のなかにバニラアイスクリームがぎっしりとつまっている。モナカとアイスクリーム、和洋折衷したアイスの極地はここなんじゃないかと思う。
しかし世論はチョコモナカジャンボが主流だと言う。あれがうまいと言う。ばかな。お前らバニラモナカジャンボを食したことがあるのか。チョコが入っていないだけで廉価版だとおもっていないか。ふっ。思慮が浅すぎる。
断言したい。チョコモナカジャンボのほうがバニラモナカジャンボの廉価版である。なぜならチョコモナカジャンボは種類別「アイスミルク」。バニラモナカジャンボは「アイスクリーム」だからだ!どん!
引用元:アイスクリームとアイスミルク、ラクトアイスなどの違いはなんですか? | 【公式】グリコ
バニラモナカジャンボは、まずそのモナカ生地が完成されきっている。アーモンドなんとかが入っているようだ。ぱりっと度がすごい。工場から直送したのでは?と疑念が湧くほどの鮮度である。そしてなにより香ばしい。一口目をかじった瞬間、目の前に金色に輝く麦穂がみえる。ナウシカレクイエムが響く。
またその内部のアイスクリームが絶品である。ミルクのコクがすごい。濃厚。あれはもう北海道。口腔内に牛紋様の北海道が広がるような覚えを起こす。なによりモナカとの相性がばつぐんに良い。なめらかでしたたかで芳醇。しかし、くどくない。意外とさっぱり食べられる。モナカという金色の野に降り立つべしはこのアイスクリームであった。
そして、なによりも私が言及したいのは、モナカにバニラアイスの水分が浸透せぬように施されたホワイトチョココーティングである!これの効果がすごい!ホワイトチョコとはチョコのなかでも「コク」の化身である!これがまたバニラアイスとモナカ生地の調和を取り持っている!失われしモナカとアイスの絆を結び、ついに人々を清浄の地に導かん!
チョコモナカジャンボがうまくないと言っているのではない。しかしチョコモナカジャンボはとりあえずチョコ入れとけばいい、みたいな風潮である気がしている。だから正味、チョコが入っているからっていい気になるなよ。アイスミルクの分際で。と言いたくなる。
彼らの広義はアイスである。いっぽうでモナカでもある。チョコとモナカが合いますか?と問いたい。ぱりっとした小麦生地と濃厚なチョコでは辻褄があわぬ。
ここで聡明な方は思うであろう。小麦生地とチョコの奇跡、シューチョコの存在があるじゃないか!と。やれやれ。たしかにあれは小麦粉生地とチョコのマッチングか成立した例である。しかしシューチョコの生地は腐ってもシューなわけである。畢竟、あれは生地のエアリアルなふわっと感がチョコとお見合い成立しているだけであって、ぱりっとしたチョコモナカジャンボの小麦生地にはミスマッチなのである。
だからシュー生地というのは例えるならばゆるふわ系女子。たいしてモナカ生地というのは質実剛健な筋肉男子。そんな筋骨たくましい男にチョコなんてゆめゆめ似合つかわしくない。男は男らしくバニラアイスの質で勝負すべきである。それが粋。それがいなせ。それがいぶし銀。
つまりモナカに合うのはバニラアイスである。でかいチョコは邪魔である。畢竟、それはチョコというにはあまりに大きすぎるのである。分厚く、重く、そしておおざっぱすぎるのである。それはまさにチョコ塊であるが故、バニラアイス、いやここでは皮肉を込めてあえてアイスミルクと呼びたい。アイスミルクと軋轢が生じるのである。
範例を申し上げる。寺尾聰も愛するパルムである。あれは見事なチョコとアイスクリームのおしどり夫婦である。あれがなぜあんなにうまいのか。それはなめらかなチョココーティングが施工されているからである。冷たいのにほどけるようなチョコのコーティングは纏綿とバニラアイスとまぐわり口の中でとろける。それは蠱惑的な大人の耽美。
いっぽう、どうだこの、なんだっけ? モナカチョコなんとかは。チョコパキパキではないか。こいつをかじり咀嚼する。アイスミルクのなかにぼりぼりとしたチョコの食感がじつに曖昧模糊である。チョコというのはとろけてなんぼなところがある。溶解してからこそのの甘美を堪能できるのに、つめたいアイスミルクと交わってなかなかとけない。アイスが溶けるまで咀嚼すればチョコもとろけるが、そんなことしたらモナカはどろどろ、アイスもその冷たい喉越しを失ってしまう。どうすればいいの。この気持ち。てな具合のにっちもさっちもいかない食い物なのだ。どうゆうこっちゃ。
では、なぜバニラモナカジャンボよりもチョコモナカジャンボが世間を取り沙汰されるのか。それは森永製菓のプライドではないだろうか。森永製菓はチョコレートに注力している。チョコボール、ダース、小枝。これらは主力の製品である。だからこのチョコレートカテゴリーを広めていきたいと念願している。だからチョコジャンボモナカを広告塔としてアイス業界に手を出した。
私はモナカジャンボの真実を知らしめたい。それはチョコモナカジャンボではなく、バニラモナカジャンボなんだよ。と言いたい。モナカジャンボの究極はチョコじゃなくてバニラなんだよ、と。
敵を知り己を知れば百戦危うからず。ゆえに私は、本日おやつにチョコモナカジャンボを食った。めちゃくちゃうまかった。チョコとモナカとアイスミルクがマーブルにジャンボした。また食いたい。