いま巷間をにぎわせている、沸騰ちゅうの話題に「あおり運転」というものがあるそうだ。あおり運転とは、後続の車が猛烈なスピードでさしせまり、車間距離をとらず、ジェスチャー的に「おせーぞ! たこ! ぶつかんぞ!」という具合に、罵倒してくるこういである。
なんて傲岸不遜なこういなのでしょうか。さいていの人種です。人間であるかどうかも疑わしい挙措だと思います。
しかし、安全運転というものはむずかしい。不慮の事故と言うのは必ずおきる。運転とは他のドライバーとの信頼かんけいである。その信頼を守れないばあいがある。車内の荷重を極力かけたくない場合など、それである。
私には三歳の息子がいるのだが、これがちいさかったころ、彼を乗せた運転には細心の注意をはらった。曲折のさい、ふだんならば安全確認ができていればそのまま、すぅーっとハンドルを切る場合であっても極力速度を落として、荷重がかからないように運転した。
そのために、では本来ないかもしれないが、「赤ちゃんが乗っています」というステッカーを貼っている。後続の車に「できるだけ荷重をかけないような運転をする」アピールの腹積もりである。でなければ、すっと曲がれる場面ですこしでも愚図つくと「なにもたついてんだよ」と鬱積させてしまう可能性があるからだ。
しかし。この「赤ちゃんがのってます」ステッカーを忌み嫌うひともいるらしい。とくに子どもを持ったことをない人などはそう思うらしい。俺は子ども生まれる前でもおもわなかったけど。またその「赤ちゃんがのっています」というステッカーを見て「だからなに?」と思うひともいるそうだ。
だからといってそう思うを斗筲の人だとはおもわない。蓼食う虫も好き好きといって、魂魄というものには嗜好性が付属する。私だって嫌いなものがある。タバコとコーヒーが臓腑のなかで攪拌し、口からうんこのにおいがするおっさんが大嫌いだ。
ゆえに「赤ちゃんが乗っています」ステッカーは、他者に不快感を与えるばあいがあるので、できるだけ避けるべきだ。では、荷重をあまりかけたくない運転をしたいばあい、しなければいけないばあい、どうすればそれが後続の車に伝わるだろうか。
そこで私は「ケーキをはこんでいます」というステッカーを考案したい。ケーキという瓦解しやすい不完全な物体の運搬には、早めの減速、注意深いハンドル操作、精緻なアクセルワークによる亀発進などが技量として必要となるからだ。
このステッカーの発案は、きっと誰しもが人生でいちどは「仕合せな誕生日」を送ったことがある、という希望的な憶測にもとづいてしまっているが、人類皆そんな一日をおくったことがあるはずだ。そうじゃなければ悲しすぎる。
ケーキという物体から抽象化される背景には「きっと今日はなにか楽しい一日になるんだ」がある。もしもケーキが崩れれば、その一日もドミノ倒し的に崩れてしまう。ちょっとした荷重であってもかけることはできない。
子どもをもったことのない人は多いかもしれないが、ケーキを慎重に運んだ思い出がない人、というのは少ないだろう。そして、それを壊してしまったさびしい思い出を抱擁している人もなかにはいるのではないだろうか。
だから、前方の車両に「ケーキをはこんでいます」と書かれていたばあい、「あ、この人はきっと慎重すぎる運転をするだろう」と推測され、安全な車間距離をとることができるだろう。
やさしい世界だ。こうして、みな「ケーキをはこんでいます」というステッカーを貼ることにより、安全すぎる運転を敢行、のちの結果、国内の国道、県道、市道は渋滞という混沌が猖獗を極め、ちょっとした玉突き事故が多発するが、バンパーこすったくらいでとやかく言うなや。誰も死なないんやぞ。めっちゃ妙案やんけ。って僕は関東人です。はは。特許は俺のもの。
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