たとえばあなたの生活に、というか世界の概念として「犬」と呼ばれる哺乳類と「ロック」という音楽が無かったとしましょう。
そこに急に突如として現れるのがチワワとシベリアンハスキー。
前述した世界の中で慎ましく生きるあなたは、果たしてこのふたつのポッと出の固有生命体が同じ「犬」というカテゴリーに属されると気がつくでしょうか。
音楽の面ではシガーロスとマリリンマンソンが急にラジオから続けて流れてきたとします。
このふたつの音楽が「ロック」とういジャンルにひと括りにされている、ということに気がつけるでしょうか。
「犬」の多種多様性は異常ですよね。
先述したようにチワワとシベリアンハスキー。
今の世の中ではイヌの概念が確立しているので、この2種類を別の種類の生き物だと思うほうが難があるかもしれませんが。でもちょっと観察してみると違う部分のほうが多いですよね。
チワワは小型犬ですね。可愛らしい風貌。イメージとしては大きな潤んだ目にいつも小刻みのプルプルと震えている、といった感があります。ナニヲソンナニオビエテイルンダイ。
一方シベリアンハスキーはキリっとした大型犬。犬ってか、いや、これもうオオカミでしょ的な捕食者の風貌。下手したらチワワを食う。そして人間も食う。(チワワを食う、と書くと「食う」の言葉のイメージからチワワがチクワに見える!!発見!!)
まったく別のいきものに見えませんでしょうか。
「ロック」の多種多様性も異常です。
シガーロスはご存知でしょうか?
美しい世界観でリスナーを圧倒させるアイスランドのポストロックバンドです。
霧の中に迷い込んでしまったかのような錯覚を抱かせるサウンドに綺麗な切ないメロディが冬の日差しのように優しく舞い込みます。
2005年のフジロックに来た時、僕の友達はシガーロスを観たらしいのですがあまりにも心地良かったのか立ったまま寝れたそうです。余談です。
一方のマリリンマンソンはノイジーでドカドカガチャガチャウギャー。うるさいバンドですね。ここで言えるのはそれだけです。好きな人いたらすみません。
でも意外とキャッチーな所もあって、高校生だったぼくはアンチクライストスーパースターを聴いてちょっとハマりました。まぁ病気だったんだと思います。好きな人いたらすみません。
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そしてその外見は、いやこれもう怪獣でしょ的な捕食者の風貌。下手したら人間も食うしシガーロスなんて格好の標的。
これまたまったく別の音楽だと思いませんか。
でもこれらは大まかに「ロック」でカテゴライズされてしまうんですね。随分、懐が深い、というか大雑把というか。
極端な例をふたつ出しましたがこの犬の多種性、そしてロックの多種性は似ていませんか、というお話。
他にも類似している点はあると思うのです。
それは混血と人間の罪についてです。
いまや様々な犬種が発見、認識されています。
しかしどうでしょう、中には雑種と呼ばれる異種間の自然交配で誕生したハイブリッドドッグもいれば、「よりかわいい、かっこいい」を追求した人為的な遺伝子交配を施した「ミックス」とかいう人間の咎もいます。
同種同士でも小型化も目論んで交配させたトイプードルなんてのはその最たるものなのかもしれません。
「咎」と書きましたが、「ミックス」やトイプーがわるいと言っているワケではないのです。古い考え方だと思いますが人の手が恣意的に加えられたことになんとなく罪を感じたのでそう記載させていただきました。
ちなみに血統書なんてのはその純血を証明させるとともに、遺伝子交配の罪をも同時に認めてしまうシロモノなのではないでしょうか。
ロックミュージックに関してはアランフリードというラジオDJが黒人のリズム&ブルースを好んでロックンロールと呼称したことからその歴史は始まりますが、ロックもまさに混血の歴史。
白人による有色人種の音楽を交配させた音楽がロックです。
エルビスプレスリーがその黒人ミュージックを模倣し、白人のカントリーウェスタンを混ぜ合わせたことによる初期混血。
そこからその血脈はビートルズやストーンズを経由し毛細血管のように細分化され、各国の音楽を搾取しながら伝播していきました。
より激しい音を求めハードロック、メタル。もっと様々な音楽を取り入れようと躍起になったプログレッシブロック。衝動を求めパンクロック。それにスカを加えたスカパンク。キャッチーさをとりいれたポップパンク。ハードコアパンク、ファストコア、ポストパンク、ポストロック。きりが無いですよね。
ロックは人種の壁を打ち破ったモノのように捉えられがちです。しかしロックは白人が作ったものです。
黒人の音楽も模倣から始まったロックの歴史、それは合意のもとではなく、むしろ一方的な窃盗です。白人は盗るだけ盗ってなにも与えなかった!!白人は咎人だ!!
このヘンを話すと長くなるので ここまでにしておきます。
犬との対比で血統書の流れを汲むと、チャックベリーはロックの血統書。黒人のブルースはやっぱりそれ自体が血統書。
様々な犬種も、ロックミュージックも人間の「もっと、もっと」という向上心、好奇心、強欲、そして渇望という名の罪から生み出されてきたのかもしれません。
最後に大事な類似点を端的に挙げて終わりにしようと思います。
それは犬もロックも人間に寄り添って生きている、ということです。
歴史の中で、そこにあるものへの欲望として人は犬を混血させ、ロックを交配させ、時に罪を犯しながらも進化させ続け、自らの傍らに置き欲求を満たしていくのでしょう。
以上が僕が「ロック」と「犬」は似ている、と思った所以です。