いつのまにかロックがロールせずにアート化してしまった。
それはそれですごいことなんですけどね。
大衆文化の芸術化。
しかし、大衆の味方であったロックンロールがその手を離し、一部の感受性ゆたかに形成された人格者たちのあいだで、高尚な趣味、極上の娯楽、嗜好品として愛好されているようで少し悲しくもあるのです。手の届かない場所にいるロックもあるのですな。
まぁロックなんてそんな大したもんじゃないぜ、なんてな声も聞こえてきそうですが、であればなおさらこのケージジエレファントというバンドを聴くべきではないかと思うわけです。
Cage the Elephantはアメリカのケンタッキー州出身のバンドです。
と言いつつも、ストロークスがそうであったように、イギリスのバンドのような印象を受けました。事実アメリカよりも先にイギリスで火がついたようです。
アークティックモンキーズやリバティーンズのいわゆるロックンロールリバイバルと称したガレージロック直系のロックンロールバンドです。
どこぞの音楽サイトでこのバンドを、
レッドホットチリペッパーズ+アークティックモンキーズ
と形容しておりましたが、これはなかなか言い得て妙ですね。
ラップというには、あまりにもお粗末。いや衝動的。
衝動的と書くとえらく格好良い響きになりますが、ま、雑ってことです。
一曲目の「In One Ear」からそんなラップをロックンロールに乗せて始まっていきますが、サビはユニゾンでいい感じにルーズなメロディなんですよ。
だらしないというか、力がはいっていないというか。
かかる具合に、7曲目「Drones In The Valley」や8曲目「Judas」、10曲目の「Soil To The Sun」はミドルテンポで、聴いているとこのバンドの内在させているメロディみたいなものが見えてくるとおもいます。
そんな「無気力さ」がベックっぽくもあるんですね。だからもうこのバンドはミクスチャー。ごちゃまぜロック。寄せ鍋ロックですよ。
3曲目の「Ain't No Rest For The Wicked」なんてのはまるでベック。
かの名曲ルーザーを思わせるようなアコースティックギターのブルージーなフレーズが印象的。フォーキーですよ。これもまた格好良いんだ。
ベック感でいったら6曲目の「Back Against The Wall」。
気だるさというのは時にかっこよくみえるのはなぜなのでしょう。
メロウで、感傷的で、虚無。
しかしギターは最高にロックンロール。
あと、ねちっこくかみつくように歌うボーカルにオアシスも垣間見えます。
以上の紹介文では、だるだるでデロデロなイメージがついちゃうかもですけど、しっかり、どっしり、ぐわっとパンチもありますからね。というかそっちが真髄。
4曲目「Tiny Little Robots」は非常にアップテンポ。
投げやりなギターフレーズ。力任せにたたいているようなドラムス。これがアークティックモンキーズっぽいといわれる所以ではなかろうか。
ロックがロールしています。おどりたくなっちゃうよ!
ちなみにこれは全国のゆうすけさんへの歌です。
Are you scared?というところがどうしても、「あ、ゆうすけ」に聴こえてしまってそらみみーあーわー。です。
続く5曲目「Lotus」これも好きな曲です。かっこいい。
僕は小節終わりのブレイク、ってのがあまりすきではないのですが、この曲は許せます、かっこいいからです。
ドラムだけ今回おそらくかなりデジタル加工してますが曲やバンドのテンションはかなりアナログなものです。
そう、アナログでローファイ。で野生的。あと小汚いイメージ。これがロックンロールですよ、お姉さん。
2曲目の「James Brown」なんてこれまたたいそうな曲名ですが、ファンクじゃないですから。ロックですね。
ファンクっぽいといったら11曲目の「Free Love」。なんといってもこの曲でしょう。かっこよすぎぃい!!
ファンクがファンクになりきれず、ロックとして消化されているのでしょうか。
ヴァースにおけるベースの入り、4小節目ウラ入りが非常にファンク。
チャカチャカしているギターもイイですな。
そしてもうドラムがちからまかせ。
ドッシンドッシン叩いちゃってる。こまけぇことはいいんだよ、と言わんばかり。
いや、こういうドラムって聴いていてすがすがしいのです。良し。
実はこのバンド、ちゃんと演奏しているのはベースくらいです。
ギターなんて2本をパンで左右にふってありますが、とりあえず弾いときました!みたいな。間に合わせのフレーズ。
たぶん本人たちも覚えていないのでは?
でもそれがかっこいいんだよ!!
いなたいギターなんて形容すると泥臭くブルージーなイメージに仕上がってしまう。
このバンドにはそんなブルージーなにおいも実はついていて、僕はそこにブラインドメロンっぽさも感じた。左右のギターの掛け合いとかね。でもブラインドメロンはちゃんと演奏している。
なんとなく弾いたギター。そう「なんとなく」ってのがちょうど良い。
そんなのがまさにリバティーンズっぽくもある。
でもリバティーンズとちがってギターソロは意外とぶっとい。
鍋をたたいている音でクリックが鳴り響く9曲目「Back Stabbin' Betty」なんてソレ。
あがりきらないギターのチョーキング。こんなもんでよいのです。
ぶっといギターソロ、へたくそすぎてだいすき。
ミクスチャー、オルタナティブてのは随分と便利な言葉で、そういっときゃとりあえずロックバンドはカテゴライズできますな。
でももうすでにミクスチャーロックというジャンルができてしまっている以上、ミクスチャーロックをやってるバンドはもう真の意味でミクスチャーじゃないのだと思うワケですよ。
そんなこんなを思う僕がミクスチャーだと思うバンドがこのケイジジエレファント。
ちなみにラストトラックは「Cover Me Again」という曲。
以外にもしっとり。で終わる。
暴れていた音の濁流も最後はせせらいでおわるのです。
しづかに、鳥のさえずり、羽ばたきのようなアコースティックギターから森の声のようなストリングスが優秀です。
ちなみに、セカンドをとばしてサードアルバム、フォースアルバムもちょこっと聴きましたがちょこっとサイケになったりで良かったです。またその感想も書きたいです。
とにかくファーストは格好良いです。
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