まだロックが好き

まだロックが好き

おめおめと生きている日記

修理に出して傷ついた。こころ。

 アイフォンが故障したので修理に出した。ってゆうかおれだってまず自分でなんとかしようとした。自立したおとなだ。子どもだって養っている。税金もビンボーになるくらいめっちゃ収めている。

 

 だからアイチューンズでバックアップをとって初期化しようとした。したら出来なかった。なぜだ。この謎はのちに解明するが、オマエはもう死んでいる、みたいなかんじでアイフォーンはすでに物理的に故障していたのである。で、ビックカメラのアップルサービスカウンターに歩をはこんだ。そしたら傷ついた、こころが。倒置法。あはは。虚無の笑い。間投詞。

 

 カウンターにつくと、ひとりの男性が接客してくれた。おれより若い。なのになぜだろう。その言葉の端端にゆるぎない自信のようなものがみなぎっている。おれはどぎまぎしてしまった。

 

 傲然としているとか、居丈高であるとか、タカビーとかそういうのではない。ただただみずからの存在にいっさいの恥じらいがない。「なにがあってもぼくはぼくですから」という、いわば死地をのりこえてきたような、落ち着き払った豪胆さがあった。

 

 おれはこういう泰然自若としたたタイプに出遭うと萎縮してしまう。おれじしんがとてもちっぽけで、みじめで、卑小な存在にかんじるからだ。おそらくおれは彼になんら勝るところがない。おれが消費活動をするくらいならそのカネを彼にクラファンをしたほうがきっと世界がよくなる。

 

 こういうタイプは若いころ、徒手空拳とはいわぬまでも、バックパックひとつで世界中を旅したにちがいない。英語にたんのうで、中国語もいける。なんならポルトガル語とスワヒリ語なんてのもオッケー。平成のシュリーマン。フェイスブックは日本人よりも旅でであった仲間たちであふれている。ちょっと強すぎる。SSR。

 

 そのいっぽうでおれは、なんて情けない。ひとりでアイフォーンを修理することもできぬ空前絶後の超絶盆暗なのである。くそっ、じぶんでじぶんが口惜しいわい。こんなことならもっとちゃんと勉学に精を出すべきであった。みなが学問に熱をいれていたころ、あろうことかおれはバンドなんぞにうつつをぬかしていたのだ。まったく親がみたら泣くぜ。

 

 でもあのころは、それがあたしの生きる道だとおもっていた。おれはベースギターが巧かったんだ。その技巧ゆえ、市民文化会館でコンサートをし、中学生をあいてにベースの技術を披瀝のうえ、「バンドの楽しさを伝えよう」てきなイベントで八面六臂の活躍だってしたことがある。青春は輝いていたんだ。

 

 だが、ベースなんて社会でなんら役に立たない。世知辛いぜ。しかも舞台は市民文化会館。かたや彼の舞台は世界。おれのせいいっぱいの舞台はなんて狭いのだろうか。高校時代にしっかりと将来を見据え、粉骨砕身勉学したものは、いまこのようにしてなにものにも負けない矜持をみにつけ、樹齢三百年の御神木のような存在感を帯びながら、眼のまえにたっている。なんなんだこのオーラは。たぶんパンツに注連縄ついてる。

 

 その接客技術にうちひしがれ、おれはこころで血をながしていた。けっして彼が悪いわけではない。おれはとにかく自分自身が情けなかった。こんなことならアイフォーンなんて修理にださねばよかった。ほんとはここにきちゃいけなかったんだ。

 

 それでもアイフォーンはつやつやになって戻ってきた。ってゆうか本体まるっと交換したのである。このこころの傷と、三万八千円と引き換えにそれを手にした。またすこし貧乏をすることになる。なさけない。そしてまた傷つく、こころ。

 

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