SWISS MISSはココア革命 - まだロックが好き

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　アントニオ猪木というひとが「元気があればなんでもできる」とそう云って憚らない。まったくめいわくなことだとおもう。さらに「馬鹿になれ」とか云いだしはじめ、もう手が付けられない。ほんとやめてほしい。

　しかしアントニオの云うことも一理ある。そうおもうのは、やはり元気があればけっこうなんでもできるし、馬鹿になったほうが物事に逡巡せずとりかかることが可能だからである。

　つまり、おれがこの日記にしるしたいことは一体全体なんなのだというと、ドラクエの命令形態でいう「ガンガンいこうぜ」。すなわち、うすぼんやりと生きるよりは、馬鹿で元気に、人生を濃厚に生くべし。ということである。

　では、いったいなにからはじめればよいのか。どうすれな濃厚な人生がおくれるようになるのだろうか。おれはやはりそれはココアを濃厚に飲むことからはじまるとおもう。

　スイスミスというアメリカの企業が開発したココアがある。過日、禁酒している都合上これをゲットし、飲みまくっているのだが、まったくもってうまい。すげぇうまい。ココア専門店で一杯７００円くらいのものを飲んでいるかのような錯覚に陥る。まるでカカオ果実を人間の想像を超えた力で濃縮したかようにココア感が芳醇で濃厚なのである。

　ひとくち飲むたびに、おれは豊満な女性をおもいうかべる。けっしてスタイリッシュではない、大柄でたくさん食べそうな女性。そんな味なのである。もしくは、むかしアメリカの映画で観た光景をおもいだす。金髪碧眼の少年が「眠れないの」といってキッチンにおずおずとやってくる。そこでママは「これを飲んでみなさい」と云い、差し出したのはホットチョコレート。そんな光景がうかぶ優しさと慈愛がつまった味なのである。

　作り方は至極簡素である。パッケージを開封し、粉末をマグカップに入れ、そこにお湯を注ぎ、匙で攪拌させるだけである。このときお湯はだいたい１８０mlだと説明書に書かれている。

　説明書を信用しないわけではないが、おれはそれよりもちょっと少なめにお湯をいれたくなってしまう。お湯を注ぐだけでできるカップラーメンという発明品のなかには、「この線までお湯をいれろ」と書かれているにも関わらず、律儀にその線までという約束を果たしたのに、なんだか味がうすぼんやりしているなぁ、とおもことがしばしばあるからである。おもにエースコックの企画物に多い。

　原点に振り返りたい。おれはなぜスイスミスのココアをチョイスしたのか。濃厚な人生をおくるためではなかったか。ここで規定量のお湯をそそぐことにより、うすぼんやりとしたココアを飲まされることになったら、人生濃厚計画はここにて頓挫してしまう。

　だからおれはちょっと少なめにお湯を注ぐ。よく少年が「黒いとこだけ歩いて帰れたら１００万円」みたいなことをする。おれもよくやった。しかし、黒いところは途中で切れる。そんなとき「あ、でも白じゃなきゃオッケー」という赦免をあたえる。これをインチキとののしりますか？　ちがう。これは目標達成を確実なものにするためのアイデアなのである。

　きっとこの宇宙のどこかにチョコレートの惑星、チョコレートプラネットがあり、そこは四六時中チョコの甘いにおいに充たされていて、もちろん大地土壌はすべてチョコ。マントルはキャラメルで火山からキャラメルが間歇的にふきだしている。そこにココアの沼があるのだが、そこから汲み取ったような濃厚さなのである。

「ココアはやっぱり森永」。なんという悪癖だろう。ここ日本国において民草はサブリミナルに洗脳されている。Ａを称揚するためにＢを嘲弄する行為はＡのポテンシャルを恃んでいないということになるかもしれない。しかしスイスミスのココアを飲んでからというものの、森永産のココアなんてのはもはやただの湯と粉でしかない。

　むろん、森永のココアもあっためた牛乳で溶解することによって、そこそこのうまさを引き出すことができる。しかしスイスミスのココアは湯を注ぐだけで、まるでチョコレートミルクを液体にしたものを飲むことができる。

　ここでおれが情理を尽くしスイスミスのココアの素晴らしさを説くことはたやすいことかもしれない。しかし、その舌で味わったほうが、拙劣な文章では感じられない、えもいわれぬ濃厚なココア体験ができるとおもうので、飲んだことがないひとは疾く買って飲んだほうがいい。迷わず飲めよ。飲めばわかるさ。