まだロックが好き

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おめおめと生きている日記

KEMURI伊藤ふみおの声とFREEDOMOSH

伊藤ふみおのボーカルは「きしめん」みてぇだな。と思う。ぶっとくて、平たくて、コシや粘りがあるわけではなく、歯切れよい。なめらかで、素材の味が活かされていて、そして「うどん」というカテゴリーに収まりきらなくなるほどの存在感。あと、たぶん嫌いなヤツがいない。

 

KEMURIというバンドにおいて、伊藤ふみおの声ってのは最大のオリジナリティなんだよな。私が世界でいちばんかっこいい声だ、とおもう日本人歌手はYOーKINGこと倉持陽一なんだけど、そのへんに匹敵するボーカルではないか、と思っている。これは褒めすぎなのかもしれないが、そう思う。優しくて、力強くて、器用で、友達いっぱいいそう。そんな声。

 

KEMURIが新譜をだしたので拝聴いたしました。FREEDOMOSHですって。

FREEDOMOSH

FREEDOMOSH

 

ここで説明的文章を入れさせていただきますと、伊藤ふみおとはKEMURIのボーカル。KEMURIというのは90年代後半から活躍していたスカパンクという音楽ジャンルを演奏する楽団。2000年代に一度解散し、さいきんまた再結成したという出戻りバンドです。当時高校生の私は愛聴していたんですね。

 

ケムリ、というかスカパンク、ひいてはスカという音楽ジャンルにおいて「ごきげん」という形容は名誉たるフレーズなんだろうけども、このFREEDOMOSHももちろんゴキゲンな一枚でした。一枚って、私は、まぁアップルミュージックで聴きましたが。

 

私の中のケムリ像ってのは2曲目の「GO!GO!GO!GO!GLOW!」6曲目の「SAKURA」みたいにパワーコードにラッパの主旋律、クリーンギターの高速カッティング。同様の7曲目「AWE」のようにボーカルメロディをサクッと切り上げ、主声部のラッパを聴かせたり、シンガロングで楽しませたりするって印象が強いバンド。それを裏切らなかった。

 

とにかく今回ラッパが吹きまくっている印象がつよかった。8曲目の「SPIRAL」もそうだ。つづく「Dancing in MOON LIHGT」ももちろん。てかこの曲、最初のボーカルのリップノイズ消してやれよ、と思ったのですがみなさん気になりませんか?…にちゃ…って音。まぁとにかくラッパがかっこいい。

 

いま聴きながらこれを書いているのですが、10曲目の「RAINDROP」は、かつての彼らのファーストアルバム、リトルプレイメイト収録の「Prayer」を彷彿とさせるギターとラッパのアンサンブル。私の好きなケムリがここにいました。なんでしょうね、この霧散した空気の感触。真っ白な冷えた空気にさしこむ一筋の光明のような力強さ。これがケムリの手口か。

 

ケムリはゴキゲン!なスカパンクバンドであるが、この独特な空気感も、あぁこのバンドが好きでよかったな、と思うポイントである。4曲目の「DIAMOND」なんてのはそれです。けっこうマイナーに強い。

 

しかし私も歳をとったのかもしれない。てか三十路だもんな、もう。

つまり、あからさまなシンガロングがいただけない。それが一曲目「THUMBS UP!」からだったので、うッ、ポジティブメンタルアティチュード…とすこし胃もたれが。

3曲目「CHOCOLATE」もそうだ。しかしこれこそがケムリ。認めざるを得ない。これが好きだったんだ、ハイスクール望月くんは。ブリッジのラッパの掛け合いは良いなぁ。これも吹きまくっている。

スカパンクはしょせんパンクだ。スカのスウィングはあまりない。もちろん縦のノリが強い。なのでドラムはすごく縦。しかしベースが裏を意識していることにより、無理やり横にひっぱっている。このベースの人は私のベーシストとしてのひとりのヒーローだったよ。

意外だったのが「My best Friend」。とにかくはっちゃけたイメージが先行していたので。いい曲だと思う。

「サラバアタエラレン」はギターソロ。俺はこのギターうまいとおもう。それは技術的なことでなく曲を活かすという部分で。カッティングはいつでも気持ちいいですが。それでも主テーマやオブリはラッパがとるので、あまり弾きまくらないんですが。

 

久しぶりにKEMURIを聴いたらなんだかちょっと若くなった気分。これをライブで合唱しながらスカダンス。モッシュピットでクラウドサーフ。ケムリを存分に楽しみたいですね。楽しくていいアルバムでした。やはり夏に聴きたいな。