「かくばかり偽り多き世の中に子の可愛さは真なりけり」
なんてことを昔から言ってはいますけれども、こうして子を持ってみると身に沁みてそれがわかるというか、なんというか、マジだな、と思う。
血をわけた息子は現在2歳ともうすぐ9ヶ月になろうとしている。
身長は94センチメートル。体重は15キロ。成長スピード★★★★☆。
髪は黒の前髪ぱっつんで、目の色は茶色がかった黒。
アジア系のモンゴロイド、黄色人種。前科はなし。
そんな彼は誰に似たのか、口を開くと堰を切ったように言語が出てくる。
だばだばと独りごちるのは昔からだったのだけれど、さいきんは疎通のできる会話が増えている。だからつまりそんな会話がパパうれしい。でも彼はまだイヤイヤ期。そんな週末だった。
過日。土曜。午前。その日は朝から雨が降っていた。沛然たる雨だった。
午睡をさせたいので午前は運動をさせることが多い。
よって公園などに出かけたいのだが、雨が滂沱としていた。
息子は「カージュ見る!」と言うのでディズニーの音声付活動写真カーズをアマゾンビデオレンタルで購入し観覧した。しかしこのままではいけない。乳酸が蓄積せず午睡の時間になっても輾転反側としてしまい眠りに落ちないのだ。
こんなときの為に私はかけがえのないサラリーを納税している。
市が運営する「こどもの城」なる施設にはからだを動かせる遊具が屋内に設置させられているという。この街の市民なら、いや非市民でも無料で遊べる場所だというのだ。
だから行った。
結果から言えば、滞在時間は20分もなかった。
インド象かアフリカ象を模した滑走台、丸太を組み合わせたちいさな展望台などなどがあり息子はすこし昇降したりして遊戯したのだが、すぐに飽きた。
盛り上がったのはジムであり、ようするに体育館なのだけれど、籠球用の的があって、それに全身全霊を込めて球を投擲する息子の姿はとても愛嬌があった。
しかし魔の2歳児とはよく言ったもので、なにが彼を魔に駆り立てるのかわからないけれども急に愚図りだした。「おしょとでる」と言って聞かなかった。
「いいかい、外は雨が降っているんだよ。雨に濡れたら風邪になってしまう。だからこのまま此処にいよう。さあこっちへいらっしゃい。私が遊んであげるから」とかなんとか言ったって聞くわけがない。そして唐突にこう言った。
「くしゃいからおしょとでるの!」
真実だった。施設内はカーペット敷きになっていた。そこは脱靴して遊ぶ場所だった。そしてその日は雨。湿気が充満しており、カーペット独特のすえた臭いが黴などの雑菌とも認識できる瘴気として立ち込めていた。目がくらむほどだった。
子どもたちは主に裸足で遊ぶ。ゆえに体液などの分泌物が染み渡っているのだろう。だから仕方が無いのだが、その鼻腔につくねばる臭いが不愉快だったのだろう。息子は私に反目し、自動のドアをくぐり雨に打たれながらも眦を決して「かえるの!」と言った。
だから帰った。
帰道。
ふたりきりの車内。息子はアイパッドの液晶のうえで指を走らせていた。
ひとりで遊ぶことはできる。しかしアプリで広告などが眼前にひろがるとひとりで対処ができない。というか商売だからしかたないのだけれど幼児用のアプリに自動広告だすのは卑怯、ってゆうか悪どいというか猪口才。そんな感じがするので辞めて欲しいなぁ。
で広告がでた。息子「これちがう!」と絶叫。私駐車しようとバック中。
「ちょっとお待ちになって」と私は懇願。
「なんでこんなんなっちゃったああ」と息子の叫喚。
あせった。たじろいだ。あれですね。アクセルとブレーキって間違えるもんですね。
私はブレーキと思いアクセルを開けてしまった。
ぐん、と後進するプリウス。その先にはローン35年の拙宅。
窓枠の庇部分にガリッと命中。
やっちまったぜ!ははは。こすった程度だけれども私の心は壊れちまった。
でも息子はかわいい。
落胆していると「パパ、だいじょうぶ?」だって。
「ああ大丈夫だよ」なんつって「元気だちて」だって。
その後、彼は慰めの歌「勇気100%」を歌ってくれました。
「やりたいこと~ やったもんだち」ってところがめちゃくちゃかわいい。
お家でカージュをたくさん観ました。おもしろかったです。