まだロックが好き

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おめおめと生きている日記

「おばあちゃんは離婚しているから君にはおじいちゃんがいないんだよ」

日曜。朝。陋屋の真表。

七分の一の所有権がある私道。

そこで子どもとツイストを踊ったりして遊んでいた。

 

ブギウギしていると向かいの御宅が騒々しい。

義をみてせざるは勇無きなり。ここはいっちょ噛みして騒動の鎮圧に躍動しようじゃねぇか、と駿河人の気質とは裏腹な性根で伺ってみた。

 

すると「祖父母が来るので清掃したり、駐車スペースの確保をしていた」とのことだった。やり場の無い魂の震えにすこし伸吟した。

 

その夕。息子が野天にいた。

二輪に乗車したり、鍬や鋤を駆使して砂利や土を弄んでいた。

近所の嬋娟たる2歳児も一緒だった。

 

刻が昏れた。夜の気配が濃くなった。

薄闇からその嬋娟たる2歳児、彼女の名を呼び出す声がした。

 

どうやら彼女のおばあちゃんらしい。

祖母。「訣別です」といった旨の発言。

闇のグラデーションに吸い込まれる自動車は、そのブレーキランプ五回明滅。

「お達者で」のサイン。

 

拙宅は新築街にある。

ゆえに年の頃5、6歳までの子どもが多い。

そんな家庭の様子を伺ってみると、祖父母の恩恵を受けているご家庭が甚だおおいと感じる。

 

「おばあちゃんが来て掃除を手伝ったりご飯を作ってくれる」

「おじいちゃんおばあちゃんが来て遊んでくれる」

「おじいちゃんおばあちゃんに買ってもらった」

「おじいちゃん宅に行ってごはん食べて来た」

 

そういえば私は至極稀に、256分の1くらいのレアな確率くらいで集団の会合に出てお酒を飲んだりする。同年代も多く、子どもがいる家庭もおられるが、夫婦揃って参加するものたちがいる。

「えっ!?子どもは?」と問うと「親にあずけてきた」とのこと。

 

それってすごい幸甚。

夫婦がいなくても子どもを見てくれる人がいる。

家のことをしてくれる人がいる。

なんなんだ親の救済システム。チートだ。

 

仕事が休めないけど子どもが熱を出したときに親が預かってくれる。

保育園のお迎えを手伝ってくれる。

 

みんな「ありがたい」なんて言っている。神ですか。

これならたまに子どもを預けて夫婦揃って育児の束縛から解放され、日頃の鬱積を晴らすことができる!素晴らしい!

 

しかしそんな神仏の「救済リスト」に我々の名前は載っていないようだ。

つまり預ける親がいない。なにかをしてくれる親がいない。

妻の両親はすでに物故している。私の親はシングルマザーでいまも働いている。

 

祖父母がなにかをしてくれる家庭がうらやましい。

周りの家庭が「親を頼りにしている」状況を垣間見ると、なんだか心が暗澹たる思いになってくることがある。

 

どうして家ばかりたいへんなのだろう。ってゆうか、なんでみんなには頼れる親がいて、我が家にはいないのだろう。神さま私はなにか悪いことをしましたか。と思う。

 

私は父親がいなくて困ったことなど一度もない。

けれども現状、頼れる存在がいないということが妻の負担にもなっていることを考えると、遣る方ない憤懣や索漠とした悲しみが湧き出ることがある。

 

そしてわが子がもうすこし世界を理解できるようになった時、この状況をなんと言おうか。

妻の両親については「死んでしまった」で仕方ない。

しかし私の親については「おばあちゃんは離婚したから君にはおじいちゃんがいないんだよ」と言うのか。

 

なんだか私はなにも悪いことをしていないはずなのに申し訳ない気持ちになる。

冤罪で捕縛され、自供を強いられているようなわだかまりがある。

 

息子はそれで「おじいちゃん不在」という事実を受け入れられるだろうか。

祖父母のいる家庭とは得られる経験体験、おもちゃなどの物品、お年玉やお小遣いなどの金銭は圧倒的に少なくなる。「なんでうちには友蔵みたいなやさしいじいちゃんがいないんだよ!」って非行の道に走るかもしれない。

 

でもだからこそ、私は、というか私たち夫婦は、他の家庭よりも子どもを愛してあげなければいけないな、とも思っている。

 

どちらかが病に臥したらそれでもうすべてが瓦解してしまう。

そんな不安のなか、すべてを賭して息子を愛して、家庭を運営せねばならない。そう思っている。

 

だいたいですよ。親に頼れるっていうのも僥倖みたいなもので、そんなラッキーで運営している家庭に比べたら、すべて自分たちだけでやりくりしている我が家、というか私と妻のほうがすごい。

すごいし、頑張っている。家の掃除もあんまり出来ていないし、引越し後の荷物だってずいぶんそのままになっている。風呂場の換気扇の「フィルターお手入れ」マークは3ヶ月以上デジタル表示されている。

でも他の家庭よりぜんぜんがんばっている。やらなきゃいけない最低限のことだけしかしていなけれど、それだけで精一杯だけど、一所懸命に頑張っている。

 

という精神的な優位性を持っていないと、この疲弊する現実を誰も救ってくれない状況を受け入れられない。

 

この土日はまじで疲れた。だれか息子の祖父母になってくれませんか。

孫育てでもう悩まない!  祖父母&親世代の常識ってこんなにちがう?  祖父母手帳

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