まだロックが好き

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おめおめと生きている日記

育児論はすべて滅びよ

 同じステップの毎日じゃ生きてることさえ忘れちゃうそれじゃ張りがない、のだろうか。さいきん三歳児が保育園に行きたがらない。朝から階段でランシド状態*1。ひじょうに欣喜たることである。

 

 どうして喜ばしいのか? 保育園に行かないと眷属たる貴公が難渋するのではないか? というぎもんが湧くかもしれないが、そらそうだ。たいへんだ。しかし、裏を返せば息子は「おうちがすき。おうちでママとパパといるのがすき」ということになり、それってやっぱペアレンツ冥利に尽きるナァ、とけっこうポジティブにおもう。

 

 世の中にたくさんの育児論が横溢している。神算鬼謀たるものである。過日、ちょっと書店の軒下をながめておったところ、「育て難い子だと感じたら読む本」というのが陳列されていてすこし立ち読みした。とんでもないクソ本だった。

 

 まぁだいたいの育児本というのが編集者の手によって「やさしい口調」などで改編されているのだろう。陽の光がすきとおった毛羽立つ繊維のようなふんわりとした口調でかかれているのだが、そのじつ内容はただの説教である。

 

 さいきん「子どもが育つ魔法の言葉」というのも購入して読んだが、これも超説諭される。ってゆうか上記の「育て難い子~」は、このドロシーの「魔法の言葉」の焼きまわしのようなものだろう。よくこんな本をおめおめと出版できたな。その勇気だけはほめてやる。ってかブログでやれブログで。

 

 つうかブログでも、テレビを見せない育児やら、スマホがなんやら、モンテッソーリというイタリア式教育やら、と自身の成功談を披瀝させておるかたがおるが、まったくもって豪儀なことだとおもう。

 

 豪儀であるが「我が家のばあいは…」という、但し書きをいれるべきである。それを真率なこころで受け入れたひとがいたとしよう。しかし子どもによって育児の方法などは十把ひとからげにできぬのだから、その育児法が失策におわる。そしてその失策したときに「みんなはこれでうまくいっているのに、なぜ我が家ばかりができぬのだろうか」という、暗いきもちになってしまう。

 

 暗いきもちになるだけならまだよいが、さいあくの場合「どうしてオマエは他の子のようにできないんだ」と子どもに責任をてんかし、子どもがドメスティックバイオレンスの的になる可能性もある。こういう場合、悪いのは親じゃなく、親がこまったときに信じた育児論にあるのではないか、とおもれはおもう。

 

 育児というものはうまくいかない。答えにつまったとき、あらゆる育児論がやくにたつのかもしれない。しかし、いわゆる説明書の「困ったときは」のように、ほんとうにこまったときに役にたたぬのである。その一例が我が家の息子における「半ズボン穿かない問題」である。

 

 炎節。この纏綿たる暑気のなか、服装というものは生死をわける。親としては通気性の高い、涼やかな服装をしてほしい。俗に言う、半そで半ズボンの小僧スタイルである。

 

 しかし、きっと母親の頑迷固陋な気質が遺伝したのだろう、息子は頑として長ズボンを穿きたがる。しかもジーンズである。「かっこいいズボンじゃなきゃイヤ!」というのが彼の主張であって、「でも半ズボンもかっこいいじゃん」と反すれば、「かっこよくない」という甲論乙駁が演じられるのである。

 

 上記の育児書によれば「子どもを甘やかしてあげてください」ということになる。しかし、この炎天下、長ズボンを装備させることは死を呼ぶ羽目になる。だがどうしても駄目だったので仕方なく長ズボンを穿かせた。外で遊ぶと、案の定すぐに疲弊し、すんでのところで熱中症を発するところであった。

 

 じゃあ長ズボンを秘匿すればよい、というご意見ご感想があるかもしれない。あまい。三歳児になればそんな陰謀はすぐに嗅ぎわけ「かっこいいズボンどこ?」と釈然としない表情を浮かばせるのである。

 

 もうどうしようもない。おれたちはランシド状態に陥った。どういうわけか育児論には「半ズボンを穿かせる方法」が見当たらない。もうこの子は二度と半ズボンを穿かぬのだ。そうしてこの夏、危険に晒されながら命がけで遊ぶのである。

 

 しかしある日。あまりにも朝の身支度が遅くなった。きりきり舞いを踊りながら出立の準備をしておったところ、渦中の息子の着替えである。どうせ着替えまい、とおもったがノリで「はいこれ着替えて」と半ズボンを出したところ、そのグルーヴに気圧されたのか、それともテンテコマイな風景が愉快だったのか、「じゃあいそぐね」と半ズボンを穿いてくれたのである。

 

 やはりノリというか勢いというか、まぁこのばあいはスピードが骨子だったのだなぁ。なんておもいました。我が家のばあいは。

・・・アンド・アウト・カム・ジ・ウルブス

・・・アンド・アウト・カム・ジ・ウルブス

 

*1:「…アンド・アウト・カム・ジ・ウルブズ」のジャケといえばわかりやすいですね