ZOZOスーツをいちはやくファッションに取り入れたバディ・ガイというブルースギタリストがいる。いまたぶん82歳くらいなんだけれど、そのひとがこの夏に新しいアルバムを出した。
画像出典元:http://amass.jp/58429/
ストーンズのミックやキース、あとジェフ・ベックも参加しているとても豪華なアルバムなのだけれど、これがまたかっこよかった。ジジイがフィーバーしてる。とても年金をもらっているとはおもえない出来である。
凄まじくブルースなアルバムで、まさにバディ・ガイを聴くためのアルバムである。ブルースやジャズやクラシックみたいな音楽は、音楽を聴くというより「その演奏者を聴く」みたいなところがある。その点でバディ・ガイは聴衆を裏切らない。
いやぁ、マジ矍鑠。だなんて感嘆していたところ、あの生きる伝説、ポール・マッカートニーも新しいアルバムを出しやがったのである。その名もエジプト・ステーション。古代の叡智が詰まったアルバムってことなのか。
おれのビートルズの推しメンはジョージ・ハリスンだが、まじもんの狂人で天才なのはやっぱジョン・レノンだとおもっている。彼は練習もしないのにバッターボックスに入って無茶苦茶な打法で飄々とホームランを打つタイプ。バキで例えるなら花山薫。
たいしてポール・マッカートニーというのは努力型の天才だとおもう。コンスタントに作品をつくり続けるし、音楽に対する情熱がやまない。てかおれはあまりポールのことを知らないのだけれど。
昔ウクライナのピアニストにゲンリッヒ・ネイガウスというひとがいて、彼曰く「才能とは知性とパッション」らしいのだけれど、ポールには、その音楽への知性とパッションがすごくあるのだとおもう。
そういったわけでポール・マッカートニーの「エジプト・ステーション」を聴いてみた。とてもよかった。好きでした。と同時に「ポール・マッカートニーってメンタル最強なんじゃねぇのか」とおもった。
もしおれがポールと道端で激突し、「私たち入れ替わってる!?」的展開になったとしたら、おれはもう二度と音楽を作らないとだらう。←だろう。地位も名誉もカネも手に入れたからではなく、プレッシャーがすさまじいからである。
ポール・マッカートニーのアルバムなんて、ヒャクパー全世界中で、10代~20台、あるいは20代~30代、もしくは30代~60代まで、幅広い年齢層に聴かれてしまう。世界中が聴く音楽だ、と言っても過言ではない。
そんななかSNSも発展しているので、10代にはウケないけど40代にはウケる、みたいな音楽を作ったところで世代間の闘争に火を点けるだけである。だからつまるとこ、全員にウケる音楽を作らなくてはいけない。
そんなことできるかっつーの。って自暴自棄になり、締め切りやべぇよどうしようどうしよう。と自分を追いこんで精神の病気になるのが「ふつう」である。
なにのどうですかこのアルバムは。すごく聴きやすい。「聴きやすい」という表現は語弊があるかもしれないが、たぶん全ジェネレーションが聴いても得心の行くアルバムに仕上がっているのである。ってなんか文が偉そうだな。ごめんよポール。
ミュージシャンが壮年になると「芸術家気取りしたかなしい出来」のアルバムを作ることがある。おれはポールのアルバムをぜんぶ聴いていないので、ポールにもそういふアルバムもあるのかもしれない。バンドオンザランとかは聴いたけど。
おれは前作の「NEW」もけっこう好きだった。ニューとかいいながら古めかしい音楽をやっちゃうとことか好きだった。
冒頭のバディ・ガイならば演奏するジャンルがジャンルなだけに、そのレールから外れなければファンから白眼視されることもなく、ずっと神聖視されるのだろう。
しかし、ロックを含めたポップミュージックはそうもいかない。むろん過去の遺産を掘り起こしてリブートすれば蓋然的にウケるだろう。しかし鮮度が枢要なポップミュージシャンは常に新しいものを作り続けなければいけない。
そういえば、ストーンズも去年かおととしくらいにブルースアルバムを出したけれども、あれもカバーが主体だった。
その点でポールはやっぱすごい。なんてったってちゃんと「ニューアルバム」を作ってしまう。ビートルズというプレッシャー、ってかポール・マッカートニーという超重量級の重荷を背負いながら作品を作ろう! とおもう鋭意たる攻めの姿勢がすごいとおもう。
そんでさらにその出来が良好ってんだから、やっぱポール、あんたイチバンだよ。