ビートルズの「ザ・ビートルズ」、通称ホワイトアルバムというアルバムが、発売から半世紀という億劫を経たらしく、あたらしいミックスによって現代に蘇るらしい。ジョージ・マーティンの息子、ジャイルズ・マーティンの手によって。蓋し因果*1である。
おれの周囲ではホワイト・アルバムを好きというひとがおおい。しかし賛否がわかれるアルバムなんだとおもう。
その理由はふたつあるとおもう。ひとつは、このアルバムがバンド的ではなく、各メンバーのソロ曲を集めたものっぽくて、アルバムに「主張」がないからだとおもう。茫洋としてる。それにビートルズというバンドが好きでも、各個人のアルバムをかって各個人が作った曲までは聴かないビートルズファンは多いとおもう。おれもリンゴのアルバムなんて聴いたこと無い。
もうひとつはインドに滞在中アコギで作った曲がおおいため、アコースティックなふんいきの曲が多く、そのためキラーチューンも少ないし、やっぱなんだかぼんやりしているからだとおもう。
おれはホワイトアルバム好きです。ジョンが作曲意欲をとりもどしてきたアルバムだし、これまでのアルバムが曲と曲という星を結んで星座を描いていたとすれば、ホワイトアルバムはただ雑然とした星が並んでいるようで、でもその一星一星が、一等星でなくても赤色巨星であったり白色矮星であったり青色超巨星だったりと、さまざまな光を放っているかんじがするから、眺めていても飽きないし、たまに「おっ!」という発見がある。
おれはビートルマニアでないから詳しいことはあまり知らないし、専門家ではないからアナリーゼすることはできないけれど、こういうとこ好きだな、つって書いていこうかな、なんておもった次第である。
- Revolution 1
- Don't Pass Me By
- Blackbird
- Revolution 9
- Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey
- Good Night
- Ob-La-Di,Ob-La-Da
- Cry Baby Cry
- Sexy Sadie
- Yer Blues
- Rocky Raccoon
- Mother Nature's Son
- Wild Honey Pie
- Back in the U.S.S.R.
- Dear Prudence
- While My Guitar Gently Weeps
- Helter Skelter
- Glass Onion
- Piggies
- I Will
- Can you take me back
- Birthday
- Happiness is a Warm Gun
- Honey Pie
- Savoy Truffle
- Martha My Dear
- The Continuing Story of Bungalow Bill
- I'm So Tired
- Long, Long, Long
- Why Don't We Do It in the Road?
- Julia
- リミックス盤について
Revolution 1
ジョンの寝レコーディングが聴ける一曲です。じぶんの声がきらいなジョンはどうにかして声質の変化を狙ったようですが、はたして効果はあったのでしょうか。たしかに間延びしてるけど。
たぶんジョン・レノンというひとに「これって変拍子だよね」って訊いてみると「えぇ!? そうなの!?」という答えが返ってきそうなふんいきがある。べつに昨今の違和のある変拍子を責めるつもりはないが、こうも自然にナチュラルに二拍子を挟み込まれると、おーい! ってなる。おーい! って。
「愛こそはすべて」や「ルーシー~」などでも聴いていて、あれ、これって……とおもうような変拍子をジョンはよくおこなう。もちろん「グッドモーニング、グッドモーニング」なんて曲もあるけれど本人に言わせれば「あれはクソ」だそうです。
Don't Pass Me By
はじめてリンゴ・スターが「作詞・作曲」でリストされた曲である。記念碑的な。そりゃまぁラバー・ソウルの「消えた恋」ではレノン&マッカートニーに共作クレジットされたけれども、この曲はリンゴのマジもんのオリジナルなのである。
ご、ごきげんなカントリーですね……。
Blackbird
ベックという漫画が大好きで、高校のころタイムリーに読んでいたのだけれど、そのなかでブラックバードを歌うシーンがあり、この曲を聴くたびに「ますおかひろみ」という人名が浮かんでしまう。
おれがアコギを指弾きではじめて弾いた曲がこれであり、じつは右手はツーフィンガーでできるんですね。というのもじつは当時ビートルズでスリー・フィンガーができるのはジョンだけだったらしいです。ポールがそれを見てうらやましいとおもったかどうかは不明ですけれども、指が二本だけだってなんちゃってスリーフィンガーでいい曲できるもん、というようなふうがあるとかんじます。
Revolution 9
ジョージは「この曲は聴かない」といっているけれど、わかるぜジョージ。おれもあんま聴かない。ながいし、ビートルズっぽくない。そりゃ「トゥモネバ」のような前衛的な曲はビートルズにもあるけれど、あれはもっと音楽然としていたし、なんというかビートルズとして「こうしよう」みたいな意志めいたものが宿っていた気がする。
それはポールも思っていたことで、ってゆうか実はポールもこういう曲をじぶんの趣味として作っていた。けれどもポールはそれをビートルズとして発表しなかった。やっぱ無理があるとおもっていたらしい。なのにジョンは「すごいだろ」みたいなかんじでやってくるし、オノヨーコも「私もすごいとおもう!」とか容喙してくるし、もういや。みたいな雰囲気になった曲で、そのときの険悪なふんいきを想像するとゾクゾクしちゃうからちょっと好き。
Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey
このアルバムはジョンの曲がおおい。サージェント・ペパーからやる気をなくしていたジョンのやる気が蘇ったアルバムという向きもある。叫ぶジョンはやっぱかっこいい。
ずいぶん騒がしいアレンジだとおもう。ジョージがレコーディングのとき、アンプの出力がすごくでかくてポールのベースがちっとも聴こえなかったらしい。そいでポールは捨て鉢なきぶんになってベースを弾くのをやめて、ちかくにあった火事を警告するバカでかいハンドベルを鳴らしはじめたそうだ。あのリンリン音は意図的に入れたものではなかったんですね。
オーバーダビングしたベースもかっこいいし、ジョージのギターもかっこいい。なんだおまえら、けっきょく仲悪くないんじゃない? なんておもうけれども、そんなことはなく、でも曲はちゃんと創る、ってとこに、メンバーは嫌いだけどビートルズというバンドは好き、みたいなのがかんじられますね。
Good Night
ディズニーソングみたいでポールの曲っぽいけれど、じつはジョンの曲なんですね。リンゴが歌っているとわかんないっすね。ってゆうかジョンが歌えよ、っておもいますですがジョン曰く「恥ずかしい」らしいです。
なぜこの曲を歌うのが恥ずかしいか、というと前妻シンシアとの息子、ジュリアンに向けた子守歌だったから、というのは有名ですね。
ホワイトアルバムは、CDで聴けば、ディスク1が「ジュリア」で締めくくられ、ディスク2がこの「グッド・ナイト」で終わるという、まさにジョンからジョンの愛する係累へのメッセージが込められている、というのは推測ですが、なんだがそういった慈愛に満ちていて、ってゆうかジョンって全体「母」についての象徴的な曲がおおい気がするんですが、とくにこのアルバムのとき、シンシアとの離婚問題があったりでいろいろと「妻」という他人に対する蹉跌がを抱いたけれども、対して母と子はどうしたって血で繋がっているわけであって、その血のなかの成分の「愛」で締めくくりたかったんじゃないですかね。
Ob-La-Di,Ob-La-Da
めちゃくちゃ仲の悪い時期で、ジョンはこの曲を「ババア向けのクソ」と言放った。というかポールがこの曲に時間をかけすぎてジョージもうんざりしていた。ジョージはこの曲で時間がかかったことを自作の「ホワイル~」で揶揄っている。
あまりにも時間をかけすぎたポールに、ジョンがマジギレしてスタジオから出て行ってしまうのだけれど、ジョンは数時間後もどってきて、そいで矢庭にこの曲のイントロのピアノ「タンタタ・タンタタ・タンタンタンタン」を弾いた、というエピソードがすっごく好きです。けっきょくジョンってそうゆうとこ音楽家なんじゃん、とおもいます。
スカのリズムを取り入れようとしたらしいですね。ジャマイカの音楽はロックにしあわせな混淆をもたらしましたね。それをけっこう早めに取り入れたポールはやっぱなかなか慧眼の士だとおもいます。
Cry Baby Cry
じつは上記「オブラディ~」のとき、エンジニアのジェフ・エメリックがビートルズのふいんきの悪さに嫌気がさし、棄権してしまっている。
ビートルズってクリシェがおおいイメージ。というかビートルズってクリシェコードのイメージ。たとえが出てこないけど。下記ハリソンソング「ホワイルマイギター~」もクリシェじゃなかったかしら。
ジョンの倦怠感のある声とメロディが下降していくクリシェに乗っかって気持ちがいいですね。
Sexy Sadie
マハリシの動向に猜疑心がうかんだジョンがつくった曲。それというのもマジック・アレックスとかいう詐欺師がジョンを洗脳したからなのだがな! ホワイトアルバムはビートルズが設立した「アップル」からはじめて出したレコードなのだけれども、このアップルコアにはさまざまな胡乱な人間があつまってきた。
それというのもブライアン・エプスタインの死が原因なのだとおもう。けっきょくアップルコアは夢想的な構想のもとで事業的にことごとく失敗するのだけれど、ブライアンが生きていればもっとすごい会社になっていたとおもう。ちゃんとエレクトロニクス部門とか発達して、ジョブズも「アップルコンピューター」なんて名前がつけられなくなっていたとおもう。
ビートルズがライブ活動をしなくなったことによってエプスタインの存在はうすくなっていったのだろう。けれども、ビートルズの精神的支柱としてエプスタインというのは大樹のようであったとおもう。
なんだか話が逸れたけれど、セクシーセディはコーラスがビートルズっぽいなぁとおもいます。
Yer Blues
ジョンのブルース。ふつうにジョンとジョージのギターかっこよくないっすか。四人で狭いスタジオに入って演奏した曲らしい。「狭い場所だと音楽のパワーが増す」らしい。あー、増してる増してる。
あとやっぱポールのベースだよ。ポールのベースはどの曲でも手を抜いてない。ヤーブルースもぶっとい芯のある音でくそかっこいい。ポールマッカートニーは最高のベースプレイヤーです。
Rocky Raccoon
ポールのカントリーふうみの曲なのだけれども、アルバム順ではこの曲の次にリンゴの「ドントパスミーバイ」が来る。いやらしいとおもう。リンゴの曲がうすくなるとおもう。やはりポールみたいにおもしろ味をつけられると、リンゴのようなふつうの曲が存在しなくなってしまう。
ホワイトアルバムってこういうおまけみたいな曲がおおい。ゆえにちょっと冗長。だらける感じというか、百円でうまい棒とかグッピーラムネとかフーセンガムとか入ってる子ども会でもらうお菓子詰め合わせみたいな安っぽさがでてしまうような気がする。
Mother Nature's Son
インドの瞑想のおかげでできたのだろうか。とても美しい曲だとおもう。たいしてホワイトアルバムのなかでも好きな曲ではないのに、ときおり「トゥルトゥートゥートゥートゥー」って歌ってることがあるから、おれ、やっぱ好きなんだとおもう。
Wild Honey Pie
これもおまけみたいな曲。とくに書くことはないけれど、たしか「空耳アワー」でこの曲が「大仁田~」と言っているように聴こえるという投稿がありましたね。それだけです。
Back in the U.S.S.R.
リンゴがめっちゃ怒って一時脱退した曲。ゆえにドラムはポールが叩いている。最初のダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダから入るポールのドラムはちょっと前のめりに聴こえません? これに比べると、リンゴ・スターのドラムというのはすごい独自のタイム感をもっているなぁとおもいます。
イントロのジェット音は、いまならフランジャーだとおもうじゃないっすか。けどなんかモノホンのジェット機の音らしいっすね。
チャックベリーとビーチボーイズのフレーズを拝借したような曲だといわれている。ビートルズにとってチャックベリーは崇拝の対象だったろうけど、ビーチボーイズについてはライバルだったんだとおもう。とくにポールとブライアン・ウィルソン。個人的にポールが「エジプト・ステーション」をだしたのはブライアン・ウィルソンの「ノー・ピア・プレッシャー」がとてもすばらし出来だったからだとおもう。触発されたのだとおもう。かんぜんな憶測だけれど。じじいのプライド。
Dear Prudence
これもポールがドラムを叩いている。まだリンゴ・スターがもどっていないからである。そう書けば察しがつくとおもうけれども、この曲順「レコーディングしてほぼできあがった順」に書いてある。
「ほぼ」というのはなんだか判然としないけれども、トラックができあがってもボツになったり、そのあとオーバーダビングをしたのが一ヵ月後、みたいなものもあるので「ほぼ全体像ができあがった時」にしてあります。
かってにリンクしてしまうけれど、このサイトが詳しい。
ビートルズのように伝説的なバンドになるとこういった記録がはっきりしているので、「レコーディング順に聴いてみる」という試みができて、そういうのも楽しくないですか?
ジョンのスリーフィンガー奏法がとめどなくぽろぽろと零れてくる。この曲を聴くと「やっぱビートルズの核はジョンなんだな」とおもう。コーラスをふくむアウトロとか聴くと、おれがイメージとして持っているビートルズの音像と合致する。ジョージの「ホワイル~」に次いで二番目に好きなホワイトアルバムの曲。
While My Guitar Gently Weeps
エリック・クラプトンというひとは、どうしてこうも他人名義の曲で名演を残すのであろうか。ジョンメイオールのビーノアルバム、デレクアンドドミノス「いとしのレイラ」、そしてこのホワイト・アルバム最強のハリソン曲、「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」。
おれはクラプトンのソロアルバムはあまり聴かない。けれどもクリームはよく聴く。なぜならクリームはジャック・ブルースのバンドだからだとおもう。クラプトンは主役として前に立つよりも、こうして「バンドのギタリスト」になると、急激に光を増すイメージがある。
きっとジョージがギターを弾いても佳曲にはなっただろう。けれどもクラプトンが弾いたことで名曲になった。バンドの険悪なふんいきもやわらいだらしい。
この曲がおれはもっともホワイトアルバムをホワイトアルバムたらしめていると感じている。なんか白っぽくね? 超いい曲。
Helter Skelter
ポールがザ・フーの「I Can See For Miles」を意識してつくったそうで、ビートルズにしてはダーティでかまびすしいですね。
これまたジョンとポールの比較になってしまうのですが、ジョンが自分自身の細胞核から曲を生み出すのにたいして、ポールは宇宙に漂う旋律を見つけて掴むのがうまいというか、だからこそポールのほうが多彩な曲が多いのではないかなぁなんておもうのです。
リンゴもキース・ムーンを意識したのか烈しいドラミングで手に豆ができた挙句の果てに「I' ve got blisters on my fingers!」と最後に叫んでいる。そこが好き。この曲のハイライト。
一応説明として書いておくけれど、この曲はチャールズ・マンソンという狂人によって曲解された。「人類の黙示録」だって。えっ!? どこをどう読んだ!? とんでもない眼光紙背、断章取義だとおもう。
Glass Onion
歌詞の中には「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」「アイ・アム・ザ・ウォルラス」「レディ・マドンナ」「フール・オン・ザ・ヒル」「フィクシング・ア・ホール」といったビートルズの他の楽曲名が登場する。ジョンは後のインタビューで、ビートルズの曲の歌詞の意味を独自に解釈して決めつける人たちをからかうために、わざと憶測されやすい作詞にしたと解説している
と、ウィキペディアにあったけれども、ジョンもたいへんだよなぁとおもう。
チャールズマンソンなんかはもっともジョンの曲を好みそうだけれども、ジョンはもうこりごりだったんだとおもう。歌詞なんてただの歌詞だよ、つって。
おれはあまり歌詞を意識しない。というのもおそらくジョンのそういった発言があるからだとおもう。別におれはジョン信者ではないけれど、けっきょく歌詞なんていろんな考察をしたって本人が「ちがうよ」なんて言ってしまえばそれまでだとおもう。
だた感想は感想として大事にすべきだとおもうけれど、あまりにたくさんの解釈は歌の本質を隠してしまう気がする。←いいこと書いた。
Piggies
こういう言い方はよくないかもしれないけれども、ジョージって意識高い系だとおもう。なんかロハスな生活好んでそうだし。あとやっぱ最年少のビートルってことで考え方が若い。当時二十五歳。ゆえにこんな社会批判的な曲をつくったんですかね。
この曲もマンソンさんによって曲解された曲のひとつだが、有体に言えば、マンソン事件の印象でおぼえている、という向きがある。
I Will
声帯模写なる術があるけれども、じつはこの曲もそんな術がしようされていて、ってこれじつはベースの音っぽいのはポールの唇から放たれているのですね。くちベース。気がつきました? なんかめっちゃフレットあるっぽい正確性というか、プレシジョンに音とれてません? みたいなポールの優しい曲。けっこう好き。
Can you take me back
こんな曲ありませんよね。ってなるんですけど、じつはクライ・ベイビー・クライのおわりにアウトロでくっついている30秒たらずの曲、これがキャンユーテイクミーバックと名づけられた曲である。アイ・ウィルのレコーディングのついでになんとなく吹き込まれたものをクライの後、レボリューション9の前に入れたのである。
「ビートルズでいちばん有名じゃない曲ってなに?」と誰かに訊かれたさい、この曲を出すとちょっと通ぶれます。ちなみにおれは妻にこう答えて「どうだ」といわんばかりのしたり顔をしました。そういうときにおすすめの一曲です。
Birthday
志村けんのバカ殿様というフレーズがどこまで通用するのかわからないけれど、おれのなかではもうそのイメージ。ポールがリンダの誕生日にむけてつくったらしい。ちなみにそのリンダ自身もコーラスで参加している。
ロックンロールを歌わせたらジョンのほうがやっぱすごい。けれどもロックンロールのリフを作らせたらポールのほうがすごい。ジョンはリズムギターがうまいけれど、ポールはベースにしてもギターにしても、各楽器がもつポテンシャルを引き出す天才だとおもう。
あとイントロのリンゴのドラムがすごくリンゴっぽくておれは好き。あのドラムがなければこの曲はそんなに輝いてないとおもう。みんなでテレビを観に一回レコーディングを切り上げるエピソードもすごく好き。
Happiness is a Warm Gun
これまたジョンのめちゃくちゃな曲で、三拍子と四拍子がからみあってポリリズムになっている。ジョンのこういう別の曲と曲をつなぎあわせる発想というか技術もすごいとおもうのだけれど、やっぱそれに合わせられるリンゴのドラムもすごいとおもう。たぶんリンゴはなにも考えずにノリだけで叩いてそう。いやわかんないけど。でもそういう天稟たるドラムの才能がリンゴにはあるような気がする。
Honey Pie
おまけのようなポールの曲だけれども、ジョンのギター聴きました? これをしてジョージは「ジョンのギターがジャズ。ジャンゴ・ラインハルトみてぇだもん」的なことをおっしゃってましたが、いいね。ほんと。ジョン。なんとなくでこんないいかんじのギター弾けるのだもの。やっぱすげぇよ。ジョン。
Savoy Truffle
ジョージ・ハリスンのボーカリぜーションはジョン・レノンに少し似いているとおもう。個人的に。もちろんそれは次回作「アビー・ロード」を吹き込んだときには、あの優しさと達観したようなサラリとしたボーカルになっていくのだけれど、ビートルズ初期のジョージはすこしジョンを意識していたんじゃないか? というのがおれの推測。
この時期からジョンはオノ・ヨーコをつねにくっつけていたからジョンに対する辟易はあっただろうけれども、ジョージはやっぱりボーカルとしてジョンのことを尊敬していたのだとおもう。この曲のボーカルにはそのジョンのねちっこいような言い回しが如実にあらわれているようで、けっこう好き。あとこの変拍子っぽいのもジョンの影響っぽくないっすか?
Martha My Dear
そもそもポールのピアノ練習曲だったのだが、「ピアノを弾いていると唇からメロディが漏れるんだ」という、おれ天才ですから感を強調する一曲だとおもいます。愛犬マーサの歌ですね。ホーンセクション以外ぜんぶポール撮り。ひとりマッカートニー。
The Continuing Story of Bungalow Bill
まじかよオノヨーコって曲。おれはべつにオノヨーコを嫌ってはないけないけど、ヨーコパートがでてくると笑ってしまう。本人は真剣なんだろうけど、でもここはつっこみどころだとおもう。なんでおまえ歌っとんねん、みたいな。ってゆうかその勇気すごくね? 天下のビートルズだよ? みたいな。オノヨーコの度胸のすごさ。おそれいる。そりゃトゥーバージンズみたいなジャケ出しちゃうわ。
I'm So Tired
いつもおもうのだが、ジョン・レノンの声には倦怠感がある。もちろんアップビートのロックンロールを叫ぶさいにはその粘り気がよい具合になるのだけれど、こういった憂いや疲労感などの微妙なニュアンスをだすのが、ほんとに上手。
Long, Long, Long
ジョージはこのころすでに「サムシング」という稀代の名曲をつくっていたようだし、実際「ホワイトアルバム」にも「ホワイルマイギター~」の名曲をのこしているけれども、やはりこの「ロング、ロング、ロング」はそんなに目立つ曲ではない気がする。
というか、おそらくすでに自分のソロアルバムの構想があったのかもしれない。あのものすごい「オール・シング・マスト・パス」である。ビートルズ解散後のソロアルバムではこのアルバムがやっぱいちばん好き。おれは勝手に「オールシングマストパス」の邦題を「だた一切はすぎていきます」にしています。
Why Don't We Do It in the Road?
「この曲めっちゃよくね?」とジョンが言ったとか言わなかったとか。ただジョンはこの曲に参加していないのだけれど、ジョンは「ポールの最高傑作のひとつ」と評したらしい。そのぶんこのレコーディングに参加できなかったことに悔悟をいだいてたそうで。
「ヤーブルース」でジョンはジョンのブルースをやったけれども、ポールはこの曲でポールのブルースを奏でた。かっこいいとおもう。またもやポールの多彩ぶりが透けてみえる曲ですね。
Julia
ジョンのソロアルバム「ジョンの魂」は「Mother」からはじまり「My Mummy's Dead」で終わるのだけれど、このふたつの曲はとても悲痛だとおもう。一方、ホワイトアルバムにおさめられた「ジュリア」には、なんだか置き忘れた陽だまりのような柔らかさがある。
きっと小野洋子との関係がよかったのだろう。ジュリアからオーシャンチャイルドへと、仄暗い深海から光の差し込む場所へと浮上させていくふうがある。なにかと挑発的なジョンだけれど、ほんとはめっちゃやさしいヤツだとおもう。そんな曲。
リミックス盤について
なんかイーシャーデモとかついているらしい。コレクターなら欲しがるのだろう。ただリミックスする必要性についてちょっと疑問である。ぶっちゃけそのままのホワイトアルバムでよくないっすか? とおもっている。
アンソロジー3にホワイトアルバムのデモとかがたしか入っていた。おれはこれもっているけど一回しか聴いてない。しかもそんな印象にない。真剣に聴くほどのものではない。おれがそんなにビートルズのファンでもないからだとおもう。
ビートルズの曲を繋ぎ合わせた「LOVE」というアルバムが昔あったけれど、まぁ一過性のエンタメだった。おもしろみはあったけど、二度と聴かないとおもう。おそらく、このリミックス盤がでても、おれは今後もオリジナル盤を聴くのだとおもう。「レットイットビー」にかんしてはネイキッドがオリジナルだとおもっているけど。
ただ、サブスクでいろんな音楽を聴けるようになって、必要性のないCDを買わなくなった。つまり月間で使用するCD代が浮きつつある。だからこそこういったコレクターズ的なものは逆に買いやすくなったのかもしれない。いい商売だとおもう。

ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)(スーパー・デラックス・エディション)(限定盤)(6SHM-CD+Blu-ray)
- アーティスト: ザ・ビートルズ
- 出版社/メーカー: Universal Music =music=
- 発売日: 2018/11/09
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
*1:当時、父ジョージ・マーティンはレコーディング途中で降板している